初出:2018/12/11 Vol.306 本の裏話 同人誌と商業誌 続き

本の裏話、続きは商業出版物のメリットについて、である!

何のメリットもないなら、ものすごい手間をかけて本作る甲斐もありませんからね。

その通り。商業でやるメリットや、紙の本にある魅力というものがやっぱりあるからね。

一方で、情報伝達速度ではネットが発達した今じゃどうやっても勝負になんないですからね。

ネットどころか携帯電話もなかった頃なら雑誌の情報が最新なんてこともあるだろうけど、もうそういう時代じゃないからなー。
商業出版物の厳しい現状
さて、本の裏話、続きは出版業界と表現、という観点から見ていこうかと思います。
前回は利益の話をしました。この点だけを見れば同人誌の方が儲かる訳ですが、ただそもそも、今や、紙の本というもので、利益を上げていく時代は、もはや過渡期を過ぎたものである、という意見もあります。
確かに未だに何百万部という売り上げを出す本はありますが、全体部数としては当然下がってきています。
「海賊版が悪い」「子どもの活字離れ」とか、理由を付ければいくらでもあるのですが、もっとシンプルな理由だと自分は思っています。
それは、単純に競合するメディアが増えて、スピーディな展開では電子メディアに完全に押し負けたから、です。
最新ニュースを原稿にして、それを校閲し、デザイナーがカッコいいレイアウトに流し込み、それを編集者が何度もチェックし、印刷所で紙に印刷される・・・。
紙の本でニュースを伝えるのには、これだけの手間がかかります。
情報を伝えるだけであれば、ネットのほうが一足であり、関わる人間も少ないので人件費も圧縮できますし、なにより早い。
SNSによる情報伝達の恐ろしい速さによって、商業のニュースサイトでさえ今や遅いと言われる中、商業出版物で「ホットニュース」を配信するのは正直無理ゲーなのです。
故に雑誌が廃れるのは当然・・・本当に良いこと無しの商業出版物に見えますが、そうでもない点もあります。
商業出版物のメリット
商業出版物のメリット、それは、まず表現にある程度の自由が認められることです。
ア理科でさえ現在の基準では、犯罪幇助だの、武器製造指南など、いくらでも表現規制的な言いがかりを付けることが出来ます。
しかし、それを言い出すと、この世の全ての技術書は悪用したらアウトなわけで、そもそも論がおかしいことになります。
表現の自由以上に、知る権利の自由もあるわけで、そうしたものを「感情論」で封印することは非常に危険なことです。これが行き過ぎたものが極端な国粋主義だったりファシズムなどの台頭のきっかけとなります。
そんなただのエロ規制や表現規制程度が・・・と思う人は歴史を勉強してみてください。ファシズムのきっかけは魔女狩りです。
そして出版社というモノを介していないだけで、同人誌は個人出版物なので個別に撃破されやすくなります。個人では、公権力にはとても勝てるものではないのです。
次に、商業出版物はISBNコードで管理され、なんやかんやで図書館や国会図書館に収蔵され、歴史に残るということです。
自分の生み出した怪物「危ない28号」も国会図書館に収蔵されていたりします(笑)。ようするに古くから存在するので業界団体がそれなりに機能して、それなりにモノが残る世界になっているということ。個人が作っているモノは残りにくいと言えます。
電子の本にはない、紙の本ならではの良いところ
最後に・・・紙の本が個人的に一番大事だと思うこと。
それはパラ見できることです。
検索機能も無い紙の分厚い本は一見非効率的な媒体に見えますが、情報密度は圧倒的で、電子の本では拡大して読まねばならないものも、紙だと表示は簡単です。
またなんとなくパラ見したり、何冊も開いて資料とする・・・ことも電子では非常に難しく、事典などはデータが重すぎてそもそもタブレットの動作が重くなるレベルで閲覧もサクサクとはいきません。
このあたりは次第に液晶(ないしELディスプレイ)、CPUの進歩などでカバーされるかもしれませんが、現時点では紙の圧倒的便利さだと言える点だと思います。
自分も漫画も紙で買っているものと電子版で追いかけているもの、双方あります。
ただ紙の漫画は、リビングでごろごろして手を伸ばしてまとめて取って机にころがして、そしてゴロゴロしながら自分のペースで楽しむ・・・ことができるのはやっぱり紙かなぁ・・・と思います。
これに関しては自分が古いだけかもですが(笑)
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前回の記事はこちら

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