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【酒税の怪物】ストロング系チューハイという突然変異のミュータント

生活と科学
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初出:2019/10/15 Vol.350 ストロング系チューハイという突然変異のミュータント
改稿:2024/02/26

Joker
Joker

うぃ・・・今日も今日とてお酒が美味しいです、先生。

くられ
くられ

のっけから酔っ払ってるんじゃないよ(笑)。しょうがない奴だなー。

Joker
Joker

そこはそれ「今夜ばかりは飲ませてもらおう」ということで一つ。ほどほどにしますから。

くられ
くられ

まあいいけど。今回はストロング系チューハイの話である。

Joker
Joker

あー・・・あれヤバいですよね。飲んだことありますけど、すぐベロンベロンになりますよ・・・度数、ビールの倍近いわけですし、ビールと同じかそれ以下のチューハイ感覚で飲むと大変アレです。

くられ
くられ

中身は醸造アルコールで、実質バイオ燃料・・・それを飲んでるわけだし、映画「マトリックス」の機械に使うアルコールを飲んでるのを笑えない。

Joker
Joker

どうせ飲むなら美味しく適量を飲みたいものですね。

ビールと酒税

この前Twitterでストロング系チューハイがミュータントという話をしたのですが、今回はその理屈をちょっと掘り下げてみましょう。

日本という国はわけのわからない税金が各所にちりばめられており、見た目は低くても実質、世界各国の中では相当な重税大国です。そして年々税制が複雑化して税金がじわじわ上がって生活が苦しくなっているのは皆さんもご存じの通りです。

例えば、ビール1本、220円として酒税額は約77円、消費税額が22円と概算すると、99円が税金です。要するに税金がなければ本来の価格は121円というわけです。

酒税は国にとっても主要な税収源ですから取りたい気持ちもあるのでしょうが、その結果、麦芽の比率を抑えた第2のビール、第3のビールなんてものが登場してはそれらが「ハイだめーー!」と即座に税金をかけられて値上がりして結果衰退するというのを横目で見てきた人は多いと思います。

国というゲームマスターはユーザーがユーザー同士でメリットがあって少しでも胴元に入る金が少なくなるとルール改訂を打ってそれを止めるわけです。なかなか悪質な運営です(笑)。

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酒税のイタチごっこの果てに生まれた怪物

1890年代には国税の30〜40%をも占めていた酒税。

しかし、2005年には3%台、そして2014年には、2.5%を割っています。

そうであるにも関わらず、基本的には少し安くなることはあっても、抜本的に安くなるということはありません。

さらには、酒造メーカーの新規参入まで、法律そのものによって大きく阻まれており、国産の酒というのは生まれにくい状況・・・という話を、日本酒やワイン製造を行なっている小さな蔵元やワイナリーで聞くので、そういう構造になってしまっているのでしょう。

特にビールは酒の中ではぶっちぎりの出荷量(全体の4割近く)のため、特に第2、第3のビールを造っても酒税法改訂で課税されて潰されるという、メーカーの努力を国が即座に潰しに来るというやりとりがあったわけです。

そんな度重なる課税ストレスにより酒造メーカーの良心のタガがはずれたようなものが、ストロング系チューハイでしょう。

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ストロング系チューハイの安さの理由

「10度未満で発泡性の酒」は、350mlあたりの税金で28円。ビールが77円なのに比べてずっと安いわけです。故に、一部例外を除いて9%なわけですね。

その中身はといえば、醸造アルコール・・・ぶっちゃけバイオエタノールに、ガムシロップ、香料、甘味料、酸味料! 以上!

せいぜい、後は果汁分が少々といった程度で、ソフトドリンクを安上がりに仕上げるノウハウをそのままアルコール飲料に転化して、税法的に最も安くなるという、原価激抑えのガブガブ行ける高アルコール飲料という、パンドラの箱のフタが開いたわけです。

原価は果汁分数%以下のソフトドリンク原価にアルコール代。

醸造アルコールは1リットルあたり数十円と、当然普通にちゃんとした材料から作るアルコールより遙か彼方の安さであり、コスパは最強です。一応食品由来なので問題もナシ! 文句あるか!!? という気迫さえ感じます。

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一線を超えた感のあるPR

売り方もご存じの通りの開き直りっぷりが凄まじい(笑)。

「昼から飲もう!」的なPR、「健康? なにそれ飲んでから考えよう!」「いっぱい飲んだら現金プレゼント!」みたいなノリでコマーシャル展開をしているのは、酒造メーカーとして今まで薄皮一枚で作ってこなかった商品へのプライドを捨てた感じが伝わってきます。

これらの簡単に酔っ払える安酒は今や空前の売り上げへとなりつつあり、そこから生み出される健康被害、しいては国保への負担は酒税なんかより遙かに重いんだろうなと思うと、なかなか感慨深いものがあります。

そもそも醸造アルコールの技術自体、農水省や経産省がバイオ燃料として肝いり予算で開発したものです。

トウモロコシの芯や稲わらなどを亜臨界水などでセロオリゴ糖に分解し、バイテク技術の結晶ともいえるスーパー酵母菌によって生み出されるエタノール・・・が何の因果か国民がガブガブ飲むことになるとはなかなか本当に感慨深いものがあります(笑)。

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追記:2020年10月の酒税改定

2018年の酒税法改正に伴い、2020年10月から、また段階的に酒税の税率が変わります。

端的に言えば、ビールと日本酒は減税、第三のビールとワインは増税って感じです。

この辺は段階を経て、少しずつ酒税の種類を減らしていく感じで、ビールは、ビールも発泡酒も第三のビールも、2026年10月には一本化。

チューハイなんかは同じく増税。日本酒とワイン・・・清酒と果実酒も同様に一本化されるとか。

この記事の初稿時点で決まっていたこととはいえ、またメーカーが振り回されることになることでしょう。

ビール類の酒税が一本化する以上、今ある発泡酒や新ジャンルは、数年後には消滅しているかもしれません。

また抜け道を探して新しい安いビールテイスト飲料が生まれるかもしれませんが・・・はてさて、ストロング系チューハイが今後も当分、という感じがしますね。

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追記:Jokerが語る「チューハイの良心」

というわけで、ここからのおまけは酒飲みの私Jokerがお届けします。

酒税法とそれに振り回されるメーカーの悲哀、そして生まれた「ストロング系」というモンスターな記事でしたが、チューハイにも潮目というものがあるようで、最近は割と良心的なものもあります。

もちろん、ストロング系もバリエーションを増やしまくっていて、当時よりも更に状況が悪化している感は否めませんけど。

2020年以降のレモンサワーブームで、やっぱりストロングな奴もあるものの、バリエーションとして普通のものでより美味しいものを・・・といった感じに、こだわりを持って作られたものが出てきた印象です。

結構色々試してみましたが、檸檬堂の「定番レモン」は、ブームにおいても潮目を変えた印象が強いですね。

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檸檬堂監修の「ノメルズ」シリーズはオススメできる

そして、個人的に好みなのが、その檸檬堂が監修してるハードレモネード「ノメルズ」シリーズです。ジンがお好きな人には特にオススメできます。

たぶん、コンビニで買えるお酒の中では今一番美味しいんじゃないかと思います。

個人的な好みはビターサワーで、日頃はほぼ缶チューハイとか飲まない私がこれだけは最近常時備蓄してるっていう(笑)。

万人向けはオリジナル、酸っぱいものが好きならサワー!サワー!サワー!ですね。お酒が好きな方は一度、試してみる価値はあると思いますよ。

※最近は入手難で悲しい・・・と思ったら販売終了っぽい。悲しい。

レモンサワー自体は色々出ているので試してみて欲しい。私は甘くない奴が好き。

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ストロング系チューハイの終焉?

※本項もJokerからのお届けとなります。

2024年2月現在、ストロング系チューハイに逆風が吹いている、とのニュースがありました。

アサヒ、サッポロは「撤退」 ストロング系酎ハイに逆風―飲酒ガイドライン:時事ドットコム
「ストロング系」と呼ばれるアルコール度数の高い缶酎ハイに逆風が吹いている。手軽に酔えるとブームになったが、消費者の健康志向の高まりに加え、厚生労働省が19日、適量の飲酒を呼び掛ける指針を決定。アサヒビールとサッポロビールが「撤退」を表明するなどメーカーは対応を迫られている。

記事曰く、アサヒ、サッポロは度数8%以上のチューハイの新発売はしない方針になったそうです。一方で「ストロングゼロ」を販売しているサントリーは継続。

本記事初出の頃は、度数の高いチューハイのブームが起きてて好調だったのが、最近では売上も落ちてて、低アルコール飲料路線に転換、っていうところでしょう。

前述の通り、ノメルズも販売終了したし、また缶チューハイの類をめっきり飲まなくなった私、Jokerですが、そんな「逆風」の中で新発売になった、サントリーの「-196℃ ストロングゼロ ギガレモン」を試しに飲んでみました。

糖類ゼロということで人工甘味料中心で組み立てられた味ですが、しっかりした甘みと、あと柑橘の果実感もあり、改めて「こりゃアル中ご用達になるな」というのを感じました。

飲みやすくするための企業努力は感じる訳でして、だからこそお上には、飲酒ガイドラインがどうたらというなら、悪法たる酒税法にメスを入れて欲しいと思います。

大した税収にもなってないのに因習でがんじがらめにしてるわけで、もう少し自由にすれば色々マシになると思うんですけどね、本記事にあるような、そもそも「ストロング系チューハイ」が生まれた経緯を考えるとね。

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著者紹介

くられ
くられ

作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku

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参考リンク

http://www2.itc.kansai-u.ac.jp/~hkyoji/PDF/wakabayashi2018.pdf

関連記事

ビールと酒税のイタチごっこに関しては以前も紹介しました。

酒のうまさをドーピング

亜留間先生の飲むと死ぬドラム缶醸造酒の話

具体的なアルコール分解速度の話。ストロング系500ml2本でワイン一本分くらいのアルコール量になります。

お酒を飲むなら美味しく適量を・・・ということで、Jokerのカクテル記事一覧は以下

じょかセレクション
「じょかセレクション」の記事一覧です。

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