初出:2018/04/03 Vol.270 火遊びの舞台裏
改稿:2020/12/24

今回は火遊びの舞台裏、防火対策の話をお送りする。マジで気をつけないと焼け死ぬからね。

不慮の事故で火だるまになって死にかけた先生が言うと説得力ありますよね。

実験じゃなくてちょっとした写真撮影だったのにやられたからな。着衣着火、フラッシュオーバーはDr. STONEでもネタにしたけど実際食らうとシャレにならん。

はっはっは。それで死なないんだから大したものだ。

とはいえ、きちんと対処をしたから事故っても死なずに済んだわけですよね。

うむ・・・火を扱う際は何重にも対策をすべきであり、もしもの時は冷静に行動しなくてはならない。

高火力・高エネルギーを扱う場合は安全第一。その上で限界まで出力をだな・・・

そう言って隙あれば燃やそうとするのは・・・アチチチチ、ちょっと待て、焦げてる! 焦げてる!
火遊びの舞台裏
爆炎舞い散る大火力。自分のライフワークは、炎と隣り合わせです。
アリエナイ理科を初め、「我々だ!」さんのところでの科学動画でも大火力を扱っています。
炎を使った実験は面白いですが、当然、炎という予測不可能な事態を起こすモノを扱うわけですから安全には十分に注意を払っています。
それでも100%安全というものは存在しません。不慮の何らかがおきて、事故や怪我に繋がることは残念ながらゼロとは言い切れないのです。
ただ、限りなくゼロに近づけ、万一の事態が起きた場合も最小限の被害で済ませられるための準備は必要というわけで、今回は火遊びの周り、カメラの外で何をやっているかという話をしましょう。
大げさなくらいに対策は講じておくのは必須なのです。
具体的な安全対策
消火器
粉末タイプは卓上では部屋中に粉をぶちまけてしまうので、際だって高火力の実験以外であれば、二酸化炭素式のものを準備、大火力になれば3、4本は用意します。予備として粉末式のものを2本用意しておけば万全です。
また、なにより、消火器は使い方を事前に知っておかないといけないので、1本使ってしまうのがはばかられる場合は、動画サイトなどでタイプ別の使い方などを見て予習すると良いでしょう。
火ばさみ・ゴミ箱
卓上で扱うもので燃え広がってしまうものなどを扱う際に、燃えない金属製のゴミ箱に火ばさみがひとつあるだけでかなり心強いです。
金属製のゴミ箱といっても、ペール缶などで十分。ペール缶はガソリンスタンドなどに言えば、無料でもらえることも多いです。
万一、予期せずに燃え始めた実験器具や布なんかを、ガラス器具ごと、投げ込んでフタをして窒息消火させることができます。
かぶせるフタはもちろん、燃えにくいものが望ましいですが、ホームセンターなどで投げ売られている端材の分厚い木の板などで十分です。
トレイ
続いて、金属やホーロー製の広いバットやトレイがあると良いです。ホームセンターなどで売られています。
これは、火消しというよりかは、可燃性のものを扱う際に、万一割れたり燃料が漏れて燃えても、バットやトレイの中以上に燃え広がらないよう、被害を限定する工夫です。
言ってしまえば、炎用の流れ出し防止柵のようなもの。自分はアルコールランプや溶媒の加熱さえ、装置全体をバットのなかで完結するようにしています。
この動画はそのバットで燃え広がりを制御しているのを逆手にとって色を分割してみたものです。これの鎮火はバットを覆える鉄板を用意していました。
可燃物だらけのところでアルコールストーブに火をつけて、失敗してそこらじゅうに火がついたまま飛び散らせて・・・という、やってはいけないことの見本市みたいな動画を見かけたこともありますが、火を扱う以上、たかがアルコールランプやストーブ・・・などとは思わずに適切に対処すべきです。
水バケツ(砂バケツ)
水バケツは屋内でも屋外の実験でも必須。自分は必ず最低2つくらいは用意しておきますし、必ず大きなバケツにバスタオルをいれてあります。
濡れたバスタオルは、燃える機材を上から覆えば最小限被害で窒息消火させられるし、二酸化炭素消火器とあわさると極めて効率的に火を消すことができます。水をかけて消火が困難なものは、砂をいれたバケツを複数個用意するといいでしょう。
確認は何重にも行おう
あとは当然燃えやすいモノが無いかチェック、また化学反応して発火するもの、温度によって高圧になるものはないか・・・諸々、常にそこまでしなくてもいいんじゃない?くらいの確認を指さしで行っています。
そうでなければ、うっかりした気の迷いから手を抜いて大火傷・・・ということにもなってしまうわけで・・・
それが例え花火の延長線程度であっても、火というものを扱うならば、相応の注意と対策をしましょう。
余談・着衣着火による事故
そして、それだけ気をつけていても事故が起きることもあります。それでも、消火対策をしておけば、被害を最小限に食い止めることも可能なわけです。
冒頭茶番で触れた着衣着火による事故は、自分の実体験でもあります。大火傷をしましたが、死なずに済んだのは、冷静に対処したからです。
加えて言えば、後にDr. STONEで着衣着火をネタにもしました(笑)
転んでもただでは起きんぞ!
著者紹介

サイエンス作家、タレント。シリーズ累計20万部の「アリエナイ理科」シリーズを始め楽しい科学書の分野で15年以上活躍。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては科学監修を務め、フィクションと実科学との架け橋として活躍中。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様」「MATSU」ぼっちの出演や、YouTubeで80万再生を超える科学動画を「主役は我々だ!」と共同製作も。仕事の依頼や関連情報は https://twitter.com/reraku
「アリエナクナイ科学ノ教科書2」好評発売中です!
新刊「マンガでわかる! 今日からドヤれる科学リテラシー講座 教えて!夜子先生」好評発売中です!
関連記事・動画
着衣着火で死にかけた話・防火対策はマジで大事。
超火力でパンを焼く
天ぷら火災系の検証動画
後半、大量の水をぶっかける時にガチガチに防火服装備なのもシャレではないです。
天ぷら火災の鎮火検証は以下の記事もどうぞ
オイルマッチを超パワーアップする
宣伝
「アリエナイ理科ノ大事典」改訂版が発売中です!
大好評につき早くも第6刷!「アリエナイ理科ノ大事典2」、発売中です。