【薬も過ぎれば毒となる】アフリカで発生した奇病の原因はドラム缶!

亜留間次郎
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初出:2019/01/04 ポータルオリジナル

Joker
Joker

亜留間先生、アフリカの方に地ビールがあるそうですね。

亜留間次郎
亜留間次郎

ドラム缶で作られる奴があります。飲み続けると死ぬけど。

Joker
Joker

あかん奴じゃないですか・・・

「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺がありますが、医学の世界では何が原因で奇病が発生して人が死ぬか本当にわかりません。

そして、謎の奇病の原因を特定するのは本当に困難で、原因不明のまま次々と人が死んでいく悲劇が起きています。

最凶の鉄分

鉄分を沢山取りましょうと言って鉄鍋の調理を進めたり、料理の中に意味の無い鉄の塊を入れたりするグッズがありますが、あれは全くの無意味でそんなことをしても鉄分は溶け出しません。

本当に鉄分が豊富に溶け出した大量の鉄分が摂取できる究極の食品があります。

それは「鉄缶醸造酒」。鉄製容器ならなんでも良いので大きな鉄鍋に酒の原料となる物を入れて一ヶ月ぐらい発酵させれば一般家庭でも簡単に出来ます。ただし、ステンレス製とかテフロン加工されている物は鉄分が溶け出さないのでダメです。

発酵させる微生物の働きにより鉄鍋から鉄分が溶出して、なんと1リットルあたり40〜80mgもの吸収性の良い鉄分が含まれた酒が出来ます。

市販のサプリメントすら軽く上回るレベルで、世界的にもこれほど大量の鉄分を含んだ食品は他に存在しません。なお、日本酒は鉄分の混入が禁忌で醸造用水は鉄分0.02ppm以下が最適とされているほどなので、いわゆるドブロクは向いていません。作るなら果実酒か地ビールがお勧めです。もっとも、日本では免許なしで酒類を作るのはアウトですが・・・それはさておき。

そして、この鉄分豊富な酒を毎日飲み続けると、数年後には「鉄過剰症」で死にます。

貧血の治療に用いられている、クエン酸第一鉄Na錠50mg。この薬の禁忌に「鉄過剰症を起こすから鉄分が不足していない人には使っちゃダメ」って書いてあるくらい、実は鉄分の摂り過ぎはヤバいです。

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アフリカの奇病

鉄過剰症はアフリカ南部に住んでいるバントゥー系民族の間で流行しているのでバンツー血鉄症(Bantu siderosis)なんて病名がついているぐらいです。

初めて病気として報告されたのは1929年(昭和4年)のことです。イギリスのアフリカ植民地で謎の死を遂げる人間が続出したことから、新種の病気が疑われました。

そこで、74人の遺体を解剖して肝臓組織を病理診断したところ、34人に肝鉄沈着が認められたために、鉄分の過剰摂取が原因で死んでいることが判明したのですが、なぜ鉄分の過剰摂取がおきているのかまったく原因がわかりませんでした。

その後、数十年経っても原因は不明のまま。

南アフリカに住んでいるバントゥー系民族特有の遺伝子疾患を疑って、鉄輸送を行うタンパク質のフェロポーチンに関わるSLC40A1遺伝子を調べたりしたけど、異常なし。

土壌の鉄分が過剰な可能性を疑って、地質調査から始まり、作物や自生する植物の鉄分まで調べましたが、こちらも異常なし。

結果、半世紀以上も不明のままでしたが、最近になって、植民地支配した欧州人が持ち込んだドラム缶が原因である事が判明しました。

ドラム缶醸造した鉄分が異常に多い地ビールを飲んでいたのが原因だったのです。

アフリカでは古代から各部族ごとに地ビールの生産が活発に行われており、昔は陶器の壺で作っていたから問題はありませんでした。

しかし、20世紀になって欧州人がドラム缶を持ち込むようになると、各地でドラム缶を使った醸造が行われるようになり、100年ぐらい前から出現したらしいです。

1リットルあたり40〜80mg、高い物では100mg超えすらあったそうで、これは医療用の鉄剤を毎日飲んでいるのと変わらないレベルの摂取量です。

鉄製と言っても世界中の酒造メーカーが使用している、テフロン加工されたり、ステンレスやホーローのタンクでは細菌の発酵による鉄分の漏出は起きません。昔ながらなの木の樽などまったく問題ありません。

細菌が元気に発酵させている間しか鉄分の漏出は起きないので、完成後の酒を鉄容器に入れても、やはり何も問題は起きないです。

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鉄分の致死量

バンツー血鉄症は1日当たりの鉄摂取量が約100mgを超えた場合に発生するので、毎日200mgぐらいの鉄分を食べさせ続け、体内の鉄分の蓄積量が20グラムを超えると重篤な肝機能障害を起こして死にます。

これは1日に50mgの鉄分が体内に蓄積した場合、約400日で致死量に達して死ぬ計算になります。

実は人間の体には鉄分が過剰になったときに体外へ排出したり、吸収量を減らしたりする仕組みが無く、ひたすら蓄積されていきます。

食品添加物の栄養強化剤として流通しているクエン酸第一鉄ナトリウムなら安く大量に入手可能でしょう。

1日に鉄分200mgを摂取させるために必要なクエン酸第一鉄ナトリウムの量は1883.6mgなので1日2グラム入れれば十分です。しかも、水溶性なのでどんな料理にも簡単に溶けて吸収性も抜群のうえビタミンみたいに加熱しても壊れません。

さらに、クエン酸第一鉄ナトリウムは食品添加物として認められているので2グラムぐらい食品に入れても合法です。しかも、食品添加物として栄養強化の目的で使用する場合は表示が免除されているので、入っていることを告知する義務もありません。

まさか必須栄養素である鉄分を取りすぎると体中に徐々に蓄積していって数年以内に致死量に達する毒物になるとは誰も考えていなかったでしょう。

不審死として司法解剖されても毒物は一切検出されないし、肝臓の組織を病理診断して肝鉄沈着を発見しないかぎり鉄分の過剰摂取であることはバレません。

末期になるまで自覚症状が出にくいですが、生きているうちに血液検査すると異常値が出るので、なるたけ末期になるまで病院にいかせないように。

発覚しても鉄分の取りすぎが毒だなんて知らなかったとすっとぼければ無罪になるかも?

もちろん、そういう思考実験なので、くれぐれも実行したりはしないよう。一切の責任は持ちません。フィクションの死因としては面白いかもしれませんね。

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参考資料

バンツー血鉄症

バンツー血鉄症 - Wikipedia

東アフリカ・ケニアにおける鉄沈着症

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo1960/20/5/20_5_470/_pdf/-char/ja

初めてバンツー血鉄症を報告した論文

Strachan, A.S.: Haemosiderosis and haemochromatosis in South African Natives, with a comment on the aetiology of haemochromatosis., M.D. Thesis, Glasgow, 1929.

バントゥー鉄沈着症(Bantu siderosis)

1日当たりの鉄摂取量が約100mgを超えた場合に発生すると推定されている。

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4ah.pdf

実験動物の事例

鉄の5倍濃度餌を与えた実験動物は12カ月目に45%が肝細胞癌を含む肝腫瘍を発症した。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/99/6/99_1248/_pdf