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添加物危険論者を相手にしてはならない理由とは?

生活と科学
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味の素主催「食と健康の未来フォーラム」

「食と健康の未来フォーラム」 食品添加物のこと、考えてみませんか?
〜私たちはどうして「無添加」が気になるのだろう〜

2020年8月31日、コロナ禍の中、「食と健康の未来フォーラム」 が開催され、ネット配信を通じて、多くの人に「食品添加物について」の有識者対談などが公開されました。

登壇者は味の素株式会社、代表取締役社長 西井 孝明氏、そして添加物の利用者側となる日生協やセブン-イレブンの役員、訪問栄養指導の現場で活躍する中村 育子 氏など、メーカーだけでなく利用者も含めた偏りを排除した面々で、さらに情報リテラシー専門家の小木曽 健 氏、公益財団法人食の安全・安心財団理事長の唐木 英明 氏 等を交えて、きちんとした情報発信をしていきたいという企業姿勢が見える大変良いイベントでした。

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自分はこの広報にご協力ください・・・という流れで、本フォーラムにゲストとして招いて頂いたのですが、実際に多くの人が勘違いしがちな情報をしっかりと提供していた、有意義なフォーラムだったと言えます。

自分は大分前から、食品添加物の安全性を伝えるために、食品添加物に関して科学的根拠のある情報を吟味して、これまで本や記事で多数公開してきましたが、正直なところ、これ以上「どのように安全性を示せばいいんだ」と考えてしまうレベルで食品添加物は安全です。

いやいや科学者だから化学メーカーの肩を持ってるんでしょ? とか、複合毒性を考えてないのでは? とか そもそも発がん性があるものを添加物に使うとか信じられない・・・という声があり、そうした消費者の気持ちを「科学的に大丈夫だから」と一蹴するのは簡単なのですが、それをしないため、フォーラムで紹介された話に補足する形で

「どうして食品添加物は安全だと言えるのだろう」

という話を冷静に、正しく伝えていく難しさについて考察してみようと思います。

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安全なものを安全であると伝える難しさ

まず食品添加物の安全性について。

当然多くの人が別に食品添加物について特別勉強するわけでもありませんし、学校でも習いません。

そして本やネット上では様々な情報が流れ、その結果、安全だと自信を持って言える! 安全だろう? たぶん気にするほどでもない? 様々な思いを持っている人がいるとおもいます。

実際の処、今や日本の安全性は世界的にも屈指の安全性であるといっても過言ではない・・・のですが、安全ですという情報ってすごく伝えるのが難しいのです。

こうした安全性や試験の厳しさについては、記事を自分もいくつか書いておりますので、そちらを後で見て頂ければと思います。ついでに動画もございます。

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最も危険な「フードホラーを煽る人たち」

動画でも話題にしましたが、食品添加物の話をする際に最も危険な存在がいます。それがフードホラーを煽る人たちの存在です。自分の食品添加物の動画の関連動画にも、普通に「避けるべき食品添加物!」みたいな煽り文句を謳った怪しい動画が跋扈しています。

「安全なものを安全という」コンテンツと「安全に思えるものが実は危険」と訴えるコンテンツでは、そもそも注目度が段違いで、前者に勝ち目はありません。

悲しいことにフォーラムでも、添加物の危険性を訴える本の著者との討論などを求める・・・みたいな意見や、そうした人の意見も参考に・・・みたいな話がやはり出ていました。

「安全指示派」と「危険信奉者」この2つを並べて意見を聞くことは一見「え? それのどこがいけないの?」って思う人が大半でしょう。

これは「科学ではない」から問題なのです。

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「添加物危険論」は科学ではない

そもそも、現在の法律や制度において食品添加物が危険である・・・という話は科学ではありません。

それは夥しい数の実験や安全性試験の元、発がん性はもちろん、有害性、蓄積性、催奇形性・・・・様々なテストをクリアしてこそ初めて使うことが認められ、それでも後々何かが発見されても問題にならないように使用料を減らし、リスクを分散し、そして食品の鮮度や味、品質を高めるために使う・・・ようになっています。

添加物危険論を展開する人物達、中にはちゃんとした大学を出て数値や科学のなんたるかを学んでいるはずの人まで、過激な本をだして危険性を煽っていたりします。

しかし彼らが、その危険性の根拠としているのは、安全性試験の内容をひっくり返して誇張しただけのものであったり、根拠もなにもない陰謀論で、ちゃんとした実験や試験に基づいた話は自分の知る限り見たことがありません。

そして彼らが、多くの安全性を確認した論文を論破するだけの実験をして、その安全性をひっくりかえすような実験データをきちんと提出して論文にまとめている・・・という話はまず見ません。

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科学であるならば論文で討論すべきである

科学者は己の集めてきた実験データや先達の積み重ねた根拠の上で理を展開するものです。

故に科学者として危険性をアピールするのであれば、わけのわからない本ではなく論文できちんと討論すべきなので、これをしていない相手は同格ではないわけです。

言ってしまえば、宇宙人、地球外の知的生命体を本気で探しているSETIのような研究機関に「自分、この前宇宙人にさらわれまして、そのときに宇宙人みたから宇宙人います」って言ってるだけの人が就職してしまうようなものです。

物理学から熱力学、量子論に・・・と多くを学んで、本気でそうした地球外生命の存在、痕跡を探している職員と「宇宙人見たし」って人を同格に扱って同じ給料を出すのはアリでしょうか?

どう考えてもナシですよね?

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「添加物危険論者」は同じ土俵に立つ権利すらない

その上で、食品添加物反対派の人の意見も聞こう・・・という意見がいかにヤバいかという話を続けます。

そんなこと言って、反対派の意見を聞きたくないだけなんじゃないの? と思う人もいるかもしれませんが、彼らの「科学的主張」がそもそも「科学的ではない」から同じ土俵に立つ権利さえないからです。

幽霊はいるかどうか? という議題に多くの科学者が実際に集めた情報からその分析をしている中に、「いや、だって自分、今そこに地縛霊いるの見えますが?」みたいなのが混ざっていると話が進まないのです。

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その上で、科学者の多くは言葉を選び、可能な限り自分の知っている範囲、確信のもてる話に関して冷静に話をする人材が多いと言えます。自分のような落ちこぼれの3流科学者はともかく、第一線の先生方になるほど、物事に対して極めて慎重で冷静です。

これに対して、「添加物危険論」を展開する人たちは違います。ベースが感情論であり、科学的根拠なんかなくても、一般の人に対して「科学的に見えればOK」という圧倒的強みがあります。

そもそもの稼業がそうして人を不安にして何かを売るといったことを生業にしている人、ちょっとしたカルト宗教の教祖めいた人なんかは、小手先口先勝負は非常に強く論理破綻していても自信は小揺るぎもしません。

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「同格」扱いする時点でアウト

結果、この2つをディベート勝負させると、「添加物危険論」がうっかり勝ってしまうような印象が出てしまう可能性さえあります。この世の「正しさ」は口先だけの論破したことが正しいわけではないのに・・・です。

そもそも勝たなくても「危険論」の人たちの勝ちなのです。それは「不安」を商売にしている彼らとしては「危険論」が「安全論」と同格に扱われた・・・という時点で公式にお墨付きを与えてしまっているからに他なりません。

もし仮に討論会をしましょう・・・といったら、危険論者はこぞって出場するでしょうが、そこでどんなに論理的に封じ込めて完封したとしても、「同格」扱いしてしまったらいけないのです。

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「大丈夫です」という情報と「危険だ!」という情報を並べられると人は危険だという情報に耳を傾けます。これは人間の危機回避能力、本能的なものなのです。だからこそ、人はそうした情報に惑わされ、正しい情報を得ようと、でたらめな誘蛾灯へと誘われます。

実際に多くのコマーシャルから悪徳商法に至るまで、この危険情報で相手を惑わせて商売をする・・・というのが有効に働いているのは言うまでもありません。おそらくこの記事についてる広告などにも「貴方の口臭 臭ってますよ!」とか「貴方の毛穴見られてる・・・」みたいなのが散見される人もいるでしょう(笑)

脅して不安を煽って購入意欲を煽る・・・実際にコロナ禍でも、トイレットペーパーの買い占めという非合理的なパニックが起こったように人は不安に弱い者です。そして多くの人は正しいリテラシーと間違った情報の区別をつけることが困難です。

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安全性を伝えていくには

とはいえ、フードホラーも一段落してきて、最近はようやく落ち着いてきた感じもあります。

これはひとえに安全性を維持し続けた企業努力の賜としか言い様がありません。どれだけ危険だとわめかれようが、ここ20年振り返って、添加物が原因で起きた健康被害などありません。

これは水道水と同じ感じだと言えます。当たり前ですが水道水の危険度が毎日変わるような暮らしを我々はしてません。

水道水は常識的に「安全」だからです。まぁ塩素くさいので飲みたくないという人はいるかと思いますが、風呂の水まで浄水にしたりする人はまずいません。

水道水の安全性は実際高いのですが、故に意識をすることなく安心安全に使っています。

上水の細かな仕組みやどういった安全性試験が行われているか、私たちの大半は知りません。でも知らずとも大丈夫というのは知っています。

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その安全性は世代を超えて受け継がれてきて初めて「常識」となり、誰も考えなくなったからといえるでしょう。

食品添加物は、そういう意味ではまだまだ「安全性」を当たり前にするのにあたって、ようやく峠にさしかかってきたくらいではないかと思うのです。

当たり前の安全性を支えているのは多くの科学者の研究の積み重ねの結果です。

これからもそうした安全性が当たり前になり、疑うまでもないものになるまで、維持し続ける。これまでのようにこれからも。

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自分の新刊「アリエナイ毒性学事典」で、添加物の話についてもより深く触れております。

毒の話だけではなく、こうした安全性にまつわる部分にも触れているので「毒性学」事典なのです。

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著者紹介

くられ
くられ

作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku

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食品添加物の話といえば拙著「本当にコワい? 食べものの正体」であれこれと触れています。

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