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亜留間次郎の究極のメニュー「尻の穴から食べるXXXX料理」

亜留間次郎
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初出:2014/12/30 Vol.100 特別寄稿:亜留間次郎

尻の穴から栄養を注入:滋養浣腸とは?

年末になるとグルメな話題が目白押しですが、合わせて料理の常識を覆す究極のメニューを紹介しましょう。題して「尻の穴から食べる料理」

人類誕生以来、どんな料理でも口から食べるものであるという常識に縛られてきました。しかし、科学の進歩は数万年にわたるそんな常識も打ち破っているのです。

歴史を振り返ると、意外と近代と言うべきか、昔と言うべきか歴史は長く、始まりは1880年代フランスの精神病院だったそうで、拒食症の患者に栄養を取らせる方法としてブドウ糖液を浣腸したというのが始まりのようです。

それ以前は無理やり口をこじ開けて流し込む乱暴な方法で、患者が傷つくことが多く看護士が噛まれたりして大変に不便だったので、一気に広まりました。

拘束台に固定されてケツの穴丸出しで浣腸されるキ○ガイって、なんか絵を想像すると微妙というか趣味によりけりですが、実は本当に真面目な医学用語で「滋養浣腸」と言って21世紀現在も実在しています。

1865年にドイツの科学を世界一チイイイイ!!にした天才科学者ユストゥス・フォン・リービッヒが発明した肉エキスが販売され、広く滋養強壮の薬として飲まれていました。これが、ユンケルみたいな栄養ドリンクの始祖だったりします。

これで滋養浣腸しようと考えたのは当然の帰結で、ドイツで幅広く行われたそうです。実は、リービッヒ博士は育児用粉ミルクも作っていて、粉ミルクを使った滋養浣腸も広く行われており、これが現代のSMプレイで行われる牛乳浣腸の始まりだったといわれて・・・いません。

まあ、この肉エキス、ユンケルなんかと同様に気休め程度の栄養しかなかったんですけどね。

明治になって日本の医学会に世界一チイイイイ!!なドイツの最新医学として滋養浣腸が伝わると日本でも広く行われるようになりました。

その後、大正時代にはいると民間で滋養強壮のために変なもので試す人がかなり出たそうで、日本では様々なアミノ酸が溶け出しているすっぽんスープが人気で尻の穴に注入するスッポン料理が実在したらしいです。ちなみに、水の煮汁のままだと浸透圧の関係で吸収が良くないので、10%はエーテルを入れるのがコツだそうです。

まさに、斬新にして古典な究極のメニュー、それは「肛門から食べるスッポン料理で滋養強壮」なのでした。

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あの著名人も使っていた!?

滋養浣腸自体は戦前は頻繁に行われていたそうなので、明治ロマン物とかで食事が食べられない病人に栄養をつけられる西洋秘伝の料理、西洋では肉から抽出した肉エキスというものを使っているらしいが、日本では手に入らない、そこで、伝統の食材、スッポンのエキスを使うことを思いつき、ケツの穴から食べる料理でたちまち元気回復という・・・料理マンガなら歴史考証でも医学考証でも完璧、ナニ? そんな話聞いたことが無い?

それは貴方が不勉強なだけです、本当に当時の文学作品をよく読むとしっかり登場しています。

なにしろ、夏目漱石大先生の「行人」に滋養浣腸している女性が登場しているぐらいですから。そして、夏目漱石先生ご本人も死ぬ直前は滋養浣腸で命をつないでいたそうです。

アメリカでもウィリアム・マッキンリー大統領が銃で撃たれて胃に穴が開いたため、感染症で死ぬまでの8日間は浣腸で栄養を取っていたそうです。意外と尻の穴から食べる料理を召し上がっていた著名人がたくさんいたりします。

もちろん滋養浣腸、入れるだけでは漏れてしまいます。滋養浣腸は栄養が腸から吸収されるまでフタをしておく必要があります。

そのために、木や金属でできた肛門の栓、つまり、アナルプラグが使用されていました。SMグッズのアナルプラグを見て不思議に思う方も多いかもしれませんが、あれは、元々は滋養浣腸で使う医療器具だったんですよ。今度は本当です。

きっと、夏目漱石先生がお使いになられた霊験あらたかなアナルプラグとかもあったんでしょうねえ。

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滋養浣腸液の「調理法」

ちなみに滋養浣腸液。調整が大変な上に効率が実は良くありません。点滴が実用化する以前はモノを食べられない人間が栄養を補給できる唯一の手段として用いられてきましたが、あまり栄養が摂取できないことが廃れた原因だったりします。

それもそのはずで、大腸と小腸の間には逆流防止があって浣腸は大腸の中までしか入りません。

大腸から吸収されるようにするために料理しなければ無駄な行いになってしまうのです。消化を省略して吸収できなければならないわけですから、料理の手段としては蛋白質をアミノ酸レベルまで分解する必要があります。タンパク質のアミド結合は極めて安定していて半端な調理法では分解しません。

調理法はしょうゆ風調味料の製法に似ています。高圧鍋に濃塩酸を水で半分に薄めたものに肉や野菜を浸して110℃で24時間煮込みます。煮込みが終わるころには肉でも野菜でも完全に溶けて液体になっているはずです。後は少し減圧して蒸留して塩酸を取り除くのをお忘れなく。塩酸入りのまま浣腸すると刺激的ですが絶命しかねません。

こうして出来たものは「タンパク加水分解物」と呼ばれ、コクやうまみをもたらす目的で醤油とか普通の食品にも入っているので健康上、まったく問題ありません。

ちなみに、浣腸は個人がやっても医師法違反になりません。一般人が薬局でイチジク浣腸を買ってきて使っても合法なのと同じ理屈です。つまり、料理店で尻の穴から料理を食べさせる浣腸料理は法律違反にはなりませんので、バンバンご活用ください。

たまたま(検閲済み)している(ピーー)がご飯食べてくれなくて弱ってきた時など一般人では点滴を入手するのは困難なとき等に大活躍します。滋養浣腸で栄養を取らせれば大丈夫。ちゃんと21世紀現在でも必要とされる状況は想定されます・・・たぶん。

栄養の摂取効率が悪く点滴に劣るため現代では行われなくなった滋養浣腸ですが、なぜか、平成25年診療報酬点数表にまだ載っていたりして、今でも保険点数45点がついている保険適用の医療行為です。どうしても尻の穴から食べたい人は病院でやってもらってね。

保険きくかどうか・・・は知りません。

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著者紹介

亜留間次郎
亜留間次郎

薬理凶室の古参三本柱のアルマジロ怪人。人間の皮を被った血統書付きアルマジロ。守備範囲は医学から工学、ノーマルからアブノーマルまで幅広く、アリエナイ理科ノ大事典など、くられ氏と共に薬理凶室関連の共著多数。単著に『アリエナイ医学事典』『アリエナイ理科式世界征服マニュアル』(三才ブックス)がある。よくわからないケダモノなのでよくわからないネタで攻めていきます。https://twitter.com/aruma_zirou

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