初出:2018/07/10 Vol.284 身の回りのプラスチック
改稿:2024/12/06
先生、一口にプラスチックといっても種類がありますよね?
同じように見えても結構違う。フライパンのテフロンもプラスチックだしな。
言われてみると・・・フライパンの上にプラスチックが加工されてるって実はすごいことですよね。
うん。PTFEはそれだけ化学的に安定しているってことだよ。
プラスチックと言ったら、やはりC4とかセムテックスだろう!
いや待て、ここで発破を仕掛けようとするな!
※プラスチック爆薬の「プラスチック(plastic)」は合成樹脂ではなく「可塑性」を意味します。
身の回りのプラスチック
今回は身の回りにありふれている、プラスチックについて紹介していこうかと思います。
最初はどれも同じに見えて、だんだんと見分けているうちに、ヒヨコ鑑定士のごとく、どんな物質なのか見えてくるようになってくるのがプラスチックです。
とりあえず身の回りのプラスチック商品の裏に素材が書いてあることも多いので、そういうのを見ていると、この素材は・・・ってだんだん見るだけでわかるようになってきます。
ポリエチレン
スーパーのレジ袋から、灯油ケース、アイスクリーム容器の蓋、シャンプーの容器などなど、最も多く使われているプラスチックがポリエチレンです。
ちなみに製造法はかなり超科学が必要で石油原料であるナフサを熱分解し得られたエチレンを1000〜4000気圧という、とんでもない高圧環境下でラジカル化させ重合させるという、実験室では手軽にできないような合成法にて作られています。
現在は触媒や合成環境を変え、様々な性質のポリエチレンが作られ、身近なものではクリアファイルとか下敷きにもなってるわけです。接着剤がききにくいのが難点です。
また、使い捨ての手袋なんかもポリエチレンで、色々と役立ちます。
ナイロン
石油化学工業では超大手、泣く子も黙るデュポン社の発明品。
ナイロンという言葉はもともとは商標でしたが、現在はアミノ結合で結びついた高分子つまりポリアミド系繊維の総称で、ロープからストッキングまで、伸縮性の繊維にはかなり使われています。
ポリ塩化ビニル(塩ビ)
数あるプラスチックの中でも屈指の縁の下の力持ちという印象が強いのが塩ビです。
非常に長期間の耐水性・耐酸性・耐アルカリ・多様な耐溶剤性を持つのが特徴。かつ難燃性であり、電気絶縁性も非常に高いと、長期間にわたって使用しなければいけない電線の絶縁被膜や水道管などに多く使われています。いわゆる塩ビ管って奴ですね。
ただ欠点として、紫外線には若干弱く、紫外線が当たり続けると、分子内の塩素がラジカル化しボロボロになります。洗濯ばさみとか、とにかくタフな現場で使われることの多い素材でもあります。また、燃やすとすさまじく臭いです(笑)。
PET樹脂
今や使ったことが無い人がいないであろうペットボトルのペットこそ、PET樹脂。
polyethylene terephthalateの頭文字をとってPETというのは、今更改めて紹介する必要もないくらいには有名なプラスチックです。フィルムや磁気テープの他、毛布やフリースといった衣類へも使われています。
なお、ペットボトルの内側にはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングというものが施されています。動画で紹介しているので、気になる方はぜひ。
このコーティングにより、炭酸飲料をペットボトルで飲めるようになった、といえばわかりやすいでしょうか。
ABS樹脂
アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンと3つの分子が共重合することによって作られるプラスチックなので、頭文字をとってABS樹脂と呼ばれています。
耐熱性がほどほどに高い上、すべすべした質感が良く、またインクの乗りが良いためテレビやゲーム機、パソコン筐体、レゴのようなブロックなどのオモチャなど、ほぼこの樹脂で作られています。
フェノール樹脂(ベークライト)
電子機器や耐薬品製品などに使われているハイテク用途の多いプラスチックですが、歴史は古く今から1世紀以上昔、アメリカ人化学者のレオ・H・ベークランドがフェノールとホルマリンを縮合させ工業化に用いた歴史あるプラスチックです。フェノール樹脂そのものの発明自体は、さらに30年ほど前になりますが。
熱を加えることで硬化する熱硬化性樹脂として最も有名な樹脂であり、3つの分子が三次元的に立体的な網目構造を持っているため割れにくいなどの機械的特性が高く、加工に向いているのが特徴。
耐熱性、難燃性に優れ、耐薬品性もあるため、電子機器の基板や試薬瓶の蓋といった用途に広く使われています。
素材として普通にベークライト板として売られてもいます。
シリコーン樹脂
有機ケイ素化合物が連なったプラスチックであり、シロキサン結合(Si-O-Si)を主骨格とするプラスチックです。その分子量から、液状のシリコーンオイル、シリコーンゴム、そして硬いシリコーン樹脂と硬度が液体から固体まで自在という点で非常に特殊な高分子といえます。シャンプーにも使われており、そして目の敵にされてノンシリコンシャンプーが・・・などと悪者にされがちですが、その辺は以下の記事もご参考にどうぞ。
シリコーンオイルは離型剤などに使われる他、ハーバリウムに使うオイルとしても使われています。
PTFE
いわゆるテフロンというもの。最近はPTFEで作られたまな板などもあり、目にする機会は増えてきましたが、まず普通の人は、フライパンのコーティング程度でしか見ないはず。
熱に強く(350度ほど)、フライパンの表面で油の使用を減らすほか洗いやすくするなどの働きがあります。半年くらいの使用でとれてしまうので、定期的に買い換えた方が良いです。
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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関連動画
コラボ動画でもろぴー先生に色の変わる液体からはじまってポリエチレンやPTFE(テフロン)の事などをガチ解説していただきました。
レイユール先生の原油・石油製品の話でも、プラスチック製品と石油の密接な関係に触れられています。
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