論文付きだから正しいとは限らない:ダイエットサプリとその実情

美容と健康
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初出:2015/05/12 Vol.119 プロピオン酸でダイエット可能という論文について
改稿:2020/10/12

Joker
Joker

先生、このサプリ、根拠として論文が添えられてるみたいなんですが・・・

くられ
くられ

一口に論文といっても、まともな研究のものもあれば、ちょっとアレなのもあるからね。どれどれ・・・

Joker
Joker

それこそ研究者でもない限り、英語の論文とかなかなか見にいきませんしね。

くられ
くられ

・・・うん、これはアレな奴の方だ。

Joker
Joker

では今回は、その辺のカラクリをご解説ください。

プロピオン酸でダイエットは本当か?

初出当時の2015年の頃、プロピオン酸がダイエットに効く、という記事をいくつか見かけました。

探してみるとその頃の記事が今でもいくつかヒットしますが、数年経っても未だにその話を見かける事があるので、今回は、その、ダイエットに効くという根拠となっている論文の話をしようかと思います。

ちなみにその論文は以下。英語です。

Attention Required! | Cloudflare

まあ、今現在であればまだしも、見にいった当時の時点で、最新の論文なのに無料で見られるとか、実はその時点で既に怪しいんですが(笑)。

それというのも、大半の大手ジャーナルの論文は、無償公開になるまで最低でも数年くらいはかかるからです。

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どうにも怪しい論文

ともあれ、まず論文を見ていくと、

  • イヌリンという多糖類がダイエット効果が高い!
  • さらに短鎖脂肪酸であるプロピオン酸とイヌリンのエステルが非常に高いダイエット効果がある!

みたいな内容に見えます。おおすごい、と、思わずイヌリンを試薬カタログで見て注文しようかと思ったくらいです(笑)

しかし、よくよく見ていくと、どうにも怪しいということがわかりました。

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対照実験のデータが実はなかった

論文を改めて見ていくと、致命的な問題点が・・・

対照試験のように見せているデータが、まさかのイヌリンとの比較しかありませんでした。

対照試験とは、要するに飲んだ人と飲まなかった人の比較です。

今回の場合、これが、「イヌリンを飲んだ人」と「プロピオン酸とイヌリンのエステルを飲んだ人」との比較になっているのです。

そして、この比較での結果も正直誤差といったもので、論文のイチオシであるプロピオン酸イヌリンエステル(構造不明)が、果たして本当にダイエット効果があるかというと、かなり微妙としか言えません。

何より、何も摂取させていないきちんとした対照試験がない以上、本当に効くのかどうかがかなり謎です。

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「読むだけ時間の無駄」な論文未満の何か

そして、体重が減っていってるグラフが表示されているのですが、この試験に参加した人達の一日に与えられているカロリーも書かれていません。

この論文が推しているプロピオン酸イヌリンエステルは、50〜100kcalものカロリーをカットしているのではないか、という話になっており、最大で一日の7%ものカロリー削減に成功、などと謳われています。

そもそもどういった方法で減ったカロリーを計測したのかもよくわかりませんが、仮に、100kcalが全体の7%のカロリーだとして逆算すると、一日あたりの総カロリーは1400kcal弱になります。

1400kcalとか、成人であれば間違いなくそのままで痩せるカロリー分量です。

試験の段階で減量メニューになっとるやんけ!

また、試験の参加者は10人にも満たないし、先ほど言った通りデータも誤差としかいいようのないものばかり。

それらしくは書かれているのですが、読むだけ時間の無駄としか思えないアホらしいものでした。

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不良科学者が憶測する試験の裏側

さて、なんでこんな試験のデータが上がってくるんでしょうか。これを不良科学者の目線で、ちょっと邪な憶測をしてみましょう(笑)

要するに、この試験では、「このダイエット成分が効果あり」という、推したい成分の結論ありきで行われているのでしょう。

ひとつのダイエット成分をよく見せかけるがために、全員ローカロリーな状態において、何も飲ませてない、イヌリン、改良イヌリンを与えてみてデータを取ってみたら、全員が痩せてしまったので(当たり前)、対照試験体はいなかったことに。

で、イヌリンとの比較データだけ見せて、より良いイヌリンを作りました。つまりこれをダイエットサプリとして今後以下略・・・みたいな裏側が透けて見えてくる気がします。

最初に言った通り、不良科学者のただの憶測です。憶測なんですが・・・だいたい合ってるんじゃないでしょうか(笑)

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お金のない零細研究室の苦しい事情

まあ実のところ、零細研究室が、サプリ会社からお金もらう代わりに、それっぽい論文をでっちあげて見せる・・・なんて話は、特に珍しい話でもないのです。

この辺、トラゾースタジオさんとのコラボ動画でもちょいと触れた話ですね。

しかしながら、一般の人はそういう裏事情など知らない訳で、何か偉い先生が立派な研究をされて、結果が出ているから本当に違いない、と思ってしまうのも仕方がないと思います。

この手の話は鵜呑みにしない事とは言うものの、下敷きになる知識がないと判断できない部分というのもあり、そういう隙間を埋めていくのも、自分の役割のひとつなんじゃないかな、などと思う次第。

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著者紹介

くられ
くられ

サイエンス作家、タレント。シリーズ累計20万部の「アリエナイ理科」シリーズを始め楽しい科学書の分野で15年以上活躍。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては科学監修を務め、フィクションと実科学との架け橋として活躍中。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様」「MATSU」ぼっちの出演や、YouTubeで80万再生を超える科学動画を「主役は我々だ!」と共同製作も。仕事の依頼や関連情報は https://twitter.com/reraku

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