初出:2014/03/18 Vol.60 合法ハーブの中身

ふーむ、元々の成分は鎮痛剤の研究だったんですね。

今のは臨床データもないしヤバヤバのやばたにえん。色々混ざってる上に効果量と致死量が近い。

ああ、ちょっとオーバーすると死んじゃうんですね。

割とあっさり死ぬ。だからヤバいと言っとるんじゃ!(カチッ)

・・・先生、何か踏みませんでした? 地雷?

割とあっさり死ぬ!(ドカーン!)
※ファイアフォックスで済みました。自爆は薬理のロマーン!
以前、かつて合法ハーブ、脱法ハーブなどと呼ばれていた、今で言う危険ドラッグの歴史的経緯について触れました。

今回は、その危険ドラッグの中身、成分について、やはり「危険ドラッグへの警鐘」として、ご紹介しようと思います。何がどうヤバいのか、というのを知る事は、身を守る上でとても大切です。
危険ドラッグは偽装麻薬
かつて脱法ハーブと呼ばれた危険ドラッグ。見た目は乾燥した植物で、いかにも大麻っぽさを感じるものです。あまりケミカルっぽさを感じさせず、大麻に似た成分を含んだ植物かと思われやすいが、そうではありません。
中身は、何の薬物的な効果もない、適当な乾燥植物片に、化学合成された様々な精神活性の高い薬物を混ぜ込んだだけのものです。
要するにバリバリのケミカルドラッグで、偽装食品ならぬ偽装麻薬と呼べるものなのです。具体的な成分について見ていきましょう。
危険ドラッグの成分
さて、危険ドラッグの成分ですが、取り締まる側とのイタチごっこの果てにいろいろな変遷があった、というのは、以前もお話しした通りです。
その成分の源流を辿っていくと、やはり大麻に辿り着きます。
大麻の主要精神活性成分であり、鎮痛作用を持つΔ9-THC。これを模したものが、危険ドラッグの中身です。
クラシカルなものではHU-210と呼ばれる、分子の構造式を見てもソックリなパチモノΔ9-THCといった感じだったのが1970年代に製薬メーカーが鎮痛剤として利用できないかと研究されていた論文に多くある、Δ9-THCの受容体の鎮痛に特化した成分(主にCPシリーズ、JWHシリーズが多い)を主要成分として含みます。
これらは鎮痛剤としての合成大麻成分なので、精神作用はオリジナルに比べ少ないです。それ故に、精神的な作用を及ぼすには危険な量を摂取しなくてはいけないということになり、危険ドラッグには危険な量が含まれると言えます。
さらに、精神活性の低さを補うために、カチノン系麻薬成分α-PVPやMDPVなどの、覚醒剤の親戚のような成分が含まれており、強い幻覚性を持ちます。
これらの成分が合わさって疑似大麻的な効果を偽装しているわけです。
何がどう危険なのか
成分的な危険性もさることながら、製造工程にも危険性があります。
植物に粉を混ぜて振りかけるだけ、というその工程では、粉の混ざり具合はムラがひどく、効果量と毒性量が近い薬物では相当危険と言えます。
例えば効果量が10mgで致死量域が30mgの成分だとすれば、中で少しダマが出来ているだけで、即座に病院送り、最悪死に至るというケースもあるわけです。
実際に、数年前の時点ですでに数十人近い重症例と死亡例が報告されており、その危険性の高さはここ十数年の危険ドラッグの中でも指折りのものと考えてよいでしょう。
麻薬ダメゼッタイ、駄目ゼッタイと言うのであれば理由を挙げよ。
拙著、アリエナイ理科でも、何故危ないのか? どれだけのリスクがあるのか? ここまで知らしめて初めて「危ない」と納得しないのではないかと自分は思うのです。
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