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【幻覚】ヘルドクターくられが語る「幻覚」実体験!【麻酔と毒草】

危ない薬
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初出:2016/09/06 Vol.188 麻酔薬と幻覚
初出:2016/09/13 Vol.189 幻覚の世界
初出:2016/09/20 Vol.190 幻覚の世界 その2
改稿:2024/03/21

くられ
くられ

本日は「幻覚」の話をお送りしようと思う。手術に使う麻酔とか実験中の事故で幻覚を見たことはあるのでな。

Joker
Joker

幻覚ですか・・・こう、一般的には視界がグニャグニャに歪んで光り輝くみたいなアレですよね。

くられ
くられ

幻覚剤によるモノだな。まあ幻覚とはそればっかりじゃあないんだが・・・実際、手術で顎を固定されてて喋れる訳ない状態で「医者と話した」って記憶があるわけだが、これは明白な幻覚だしな。

Joker
Joker

ああ、自ら作り出すタイプの幻覚は明瞭ですから「こんなにはっきりしてるんだから事実に違いない! 私は見たし感じたんだ!」となりやすいですよね。

POKA
POKA

はっはっは。まさしく「お前がそう思うんならそうなんだろう、お前ん中ではな」である!

Joker
Joker

元ネタの意味とはちょっと違う気がしますが・・・

くられ
くられ

ま、でも、認識などちょっとした化学物質のバランスによってコロコロ変わるものである。では、今日も楽しく実験をしようか!

Joker
Joker

・・・チョウセンアサガオの抽出実験はやめておきませんか?

眠れない男と幻覚の映画

幻覚を見るということ

幻覚を見たことはありますか?

自分は、手術を受けた際の麻酔薬、ケタミン(商品名:ケタラール)、プロポフォール(商品名:ディプリバン)などによる幻覚を体験したことがあります。

いや、別にそんな体験、別にしなくてもいいとは思うのですが・・・が、しかし。

幻覚に陥る自分を観察していると、人間の「意識」というものがどうやって構成されているか、脳がどうやってモノを認識しているか、そんなことが俯瞰で見えてきます。

もし、こうした「幻覚」を体験するチャンスが巡ってきたら、どのように観察するのか、そんなコツの話などを今回はしていこうと思います。

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幻覚の種類

一口に幻覚といっても、実は結構いろいろあります。

人格自体が乖離してしまうもの。五感の情報が混乱するもの。夢と現実が区別できなくなる現実乖離。脳の機能定価による情報の観測不可能状態。

自分の体験ベースで言うとこんな感じです。念のため申し上げておきますが、非合法な薬物による経験ではありません。

先に触れた通り、麻酔薬での体験や、実験中の事故によるもの、あるいは重度の熱中症によるものなどです。

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幻覚と客観視・主観の絶対視は良くない

ある程度、生理学的な知識を持った上で幻覚を体験すると、それがどうやって起きているのかを、後で客観的に認識することも可能です。

端的に言えば「ああ、今、脳がバグってるんだな・・・」って感じです。こうした客観視は結構重要で、パニックによる混乱の加速を抑制する効果もあります。

所詮、人間の持つ「主観」など、脳内の化学物質のバランスが少々崩れた程度でゴチャゴチャになってしまうものなので、絶対視すべきではありません。

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幻覚剤のメカニズムは不詳

さて、まず「幻覚」と一括りにしてしまっていますが、脳のどの部分が誤作動しているかによって、幻覚の内容も大きく変わってくると言えるでしょう。

幻覚と言われて想像するのは、違法薬物で幻覚剤として有名なLSDの体験談かと思います。

よく聞く、極彩色の世界、世界がぐにゃぐにゃに曲がって光って見えるモノ・・・こうした幻覚剤の詳しいメカニズムは、よくわかっていません。

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脳のバグり方

ただ、こうした幻覚剤や麻酔薬などの薬物性のもののほか、ストレス、てんかん、統合失調症・・・熱中症や極度の睡眠不足によるものなど、様々なバグり方があります。

脳の情報分析自体を麻痺させて、五感の解析を困難にしたり、非常回路的スイッチを入れるもの。

統合失調症に多い一部の受容体の増加や、大脳基底核を失調させるなどなど、いろいろあるようです。

自分も、実際に体験したのはほんの一部でしかありません。しかしそれでも、バグっていく様はなかなか他では経験できないものでありました。

あえて表現するのならば、「脳が脳として機能していることを客観視できる感」というのが限界でしょうか。

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恋愛と幻覚

しかし、こうしたものだけが幻覚なのではありません。

もっとも身近な「幻覚」は、言ってしまうならば「恋愛」がそうです。こういうことをいうと怒る人もいるでしょうが、よくよくフラットに考えてみてください。

他人に対して謎の恋愛感情をいきなり激しく持ってしまう感情の変調ですよ? これを幻覚と言わずしてなんと言うのでしょうか?

実際、恋愛感情が持続するのは約3年くらいですし、覚めてしまうと「なぜ好きになったのかわからない」状態に陥ることもあるわけですしね。

この辺は別に記事があるので興味があればそちらをどうぞ。

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麻酔薬「ケタミン」の体験談

さて、そろそろ実体験の話に移りましょう。かつて手術で「ケタミン」という麻酔薬を使った時のことです。

この麻酔薬が静脈中に流れると、20秒以内に意識はぶっとびます。

ぶっ飛ぶときは、目を開けていると光として入っている脳への視覚情報が処理しきれなくなり、高速で回転、ないしは移動しているように見えるため、ジェットコースター的と表現する人が多いというのもよくわかります。

次第に耳に入る声や音も、「声→音声→言葉→単語→意味」の解析ができなくなっていき、謎の「音」程度の情報としか知覚できずに意識がショートします。

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術後せん妄の事例

完全にブラックアウトするというよりは、サイケデリックな光情報の海の中を永久に彷徨うような感覚を受けました。

ようするに自分の場合は手術中(口腔内手術)だったわけで、手術台の明るい光を浴びていたためにそのような「解釈」になったのでしょう。

意識消失自体は30分程度で、その間に局所麻酔やら諸々の麻酔をうたれているわけですが、そのときの現実と夢の区別は極めて曖昧です。

自分も口腔内手術なのに医師と会話していた記憶があり、物理的に無理なはずなのに、記憶はかなり明瞭とあります。

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裁判沙汰になったケースも・・・

ゆえにかつて事件とされ、現在も裁判が進行中の、女性が手術中にわいせつ行為を受けた・・・と申告しただけで執刀医が逮捕された経緯に関しての「発言内容」は極めて「疑わしい」「根拠に乏しい」と自分は思うわけです。

本件で焦点になる「術後せん妄」は手術後にいったん平静に戻り、1~3日経過してから、錯乱、幻覚、妄想状態を起こす症状です。

実際、自分も、口なんか固定されてて動かしようがないはずなのに、主観の上では「医者と会話していた」訳でして、実際にはそんなこと不可能なんですが、そう思い込んでしまうと本人の主観が真実になってしまう次第。

こういうことがあるから、認識の客観視というのはとても大切だと思うのです。

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ドジっ子くられの事件簿「チョウセンアサガオ事件」

さて、続いてご紹介するのは、自分の過去の失敗談の話。「チョウセンアサガオ」事件です。

チョウセンアサガオという植物は、そこら中に生えている植物で、抽出も簡単です。

しかし、その毒性は結構なものがあり、アトロピンにヒヨスチアミン(ラセミ体)ナス科の植物に多く含まれるアルカロイドで、致死性は低いものの強力な意識混濁を起こします。

せん妄状態(ダリリアム)という、自分がどんな状態か次第に失われ、右も左も上も下もなくなって、次第にすべてが理解不可能になって漠然と恐怖のみが支配することが多い、極めて危険なサイコブレイクを引き起こす毒です。

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漫画みたいな事故の話

で、かつて、まだまだ若かった頃。そんなお手軽に手に入る植物であれば、じゃあ抽出してみようとやはり思う訳でして、ご多分に漏れず自分も試してみたことがありました。

その抽出工程で、水層に移したあと、再度、有機層で回収して精製しようとしていたところ、ビーカーの中に不純物を発見。

注射器で吸い出したところ、またも注射器の真ん中に移動・・・そこで注射器を振って遠心力でゴミをどけよう・・・などと馬鹿なことをしていたところ、太ももに見事に刺さり、弾みでそのまま水溶液が注射されるという大惨事に。

漫画みたいで、今でこそ笑い話にしておりますが、なかななかシャレにならない事態です。間違っても実験中に危ないことはしないように。

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チョウセンアサガオによるサイコブレイク

しばらくは強力な喉の渇きとドライアイが起こった程度で、意外と大したことない・・・と思っていたのですが、次第に自分の注視していないものが動き出すという幻覚が起き、その後距離感が完全に消失。

6畳程度の狭い部屋が1ヘクタールくらいに感じられる(マトリックスの武器庫のイメージが近い)などの情報認知能力の欠落が起こり、次第に意識を強く持たないと目の前にあるすべてのものが動き出すという幻覚が出てきた・・・あたりで記憶がショート。

気がつけば次の日で、猛烈な鼻の痛みで目を覚ましました。

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記憶にない奇行・白いシーツのお部屋

起きると、部屋中に白いシーツが敷かれており、部屋の隅に律儀に折りたたんだ服があり、全裸うつぶせという謎のポーズで目を覚ましたため鼻が体重でつぶれ酷い痛みなわけです。

幸い近隣を全裸で大行進とかしてなかったから良かったものの、自分の意識がなくなって、勝手に何かやっているというのは極めて恐ろしいものです。自分が酒を飲まないのも、もともと強くないのにも合わさってこういう「正気」を失うことに極めて強い抵抗を感じているためです。

いや、単に思考回路が鈍るのが嫌いなだけですが(笑)。ともあれ、生きてるおかげで今もこうやって原稿を書いていられるわけです。

チョウセンアサガオダメゼッタイ(笑)

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POKA先生が見た「フェンタニルの幻覚」

本記事で触れたくられ先生の幻覚は「ケタミン」によるものでしたが、POKA先生がかつて手術のために入院した際には、麻酔である「フェンタニル」による幻覚を見たそうです。

その様子については、対談動画でつぶさに語られております。

また、その際の幻覚に出てきた「山岡」牌は、しろへび先生がナイフ作りの傍ら、3Dプリンタで実物として「触れる幻覚」を作っていたりします。

https://www.shirohebi.shop/
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関連動画

ケタミンはアメリカでは鬱の治療に使われているそうな。

くられ先生が語り部の、我々だ!コラボ動画「合法昔ばなし」・天才薬学者。これも幻覚体験からの〜〜というお話になっております。

アレクサンダー・シュルギン著の「PIHKAL(ピーカル)」「TIHKAL(ティーカル)」

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著者紹介

くられ
くられ

作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku

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