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髪・肌がボロボロになる「食べないダイエット」の現実

美容と健康
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初稿:2025/12/06

くられ
くられ

本日は「食べないダイエット」についてである!

Joker
Joker

食べないダイエット、ですか。そりゃ痩せるは痩せるでしょうけど・・・

くられ
くられ

うむ。体重は減る。が、美しくなるために痩せたい、というのであれば、最悪と言っていい。

POKA
POKA

はっはっは。絶食で痩せると、いわゆる「病的な痩せ方」になるからな!

くられ
くられ

髪も肌もボロボロでやつれているだけになる。本当に良くないよ・・・

Joker
Joker

でも、それでも断食してダイエットする方、いますよね。

くられ
くられ

なので、今回はその辺を科学的に説明していこうと思う。

POKA
POKA

はっはっは! 何、このマシンを使えば強制的に運動を・・・

Joker
Joker

・・・どう見ても拷問器具なんですが。

くられ
くられ

やめんかボケ!!

「食べないダイエット」は、自分自身の体を共食いするダイエット法である

ダイエットの話になると、定期的に「食べなければ痩せるでしょ」という結論に行き着くことがある。

もちろん、食べなければ摂取エネルギーがゼロになり、生命維持のために貯蓄である脂肪などを燃やすので、体重という数値の上では痩せていく。その理屈自体は間違っていない。

しかし、これはただ「やつれている」だけなのです。

美しくなるためにダイエットをしているのに、こんなやり方のダイエットでは、美容的には最悪。もちろん健康的にもカスで、将来の健康を売り渡すような、危険な行為であります。

その理由を、生理学に見てみましょう。

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我々の体は「動的平衡」である

私たちの体は「どっしりと置かれた岩」ではなく「流れる川」だと言えるのです。

ピンと来ないかと思うので、具体的に解説していきます。

置かれた岩、その構成成分は、昨日も今日も明日も同じです。しかし、流れる川は、見た目こそ同じものの、そこに流れている水は常に変化しています。

生物というのは、この流れる川のごとく、実は流動的です。

「昨日の私」は「今日の私」と、主観的には同じですが、非常に細かいレベルで生物学的に見ると、人間は「昨日のまま」存在しているわけではありません。

動的平衡(どうてきへいこう)と言われることもありますが、自分を構成する骨や細胞は、どんどん入れ替わっています。

つまり、人間の肉体というものは、日々、作り替えられているのです。

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昨日の私と今日の私は、主観的には同じ人間に思える。しかし、ミクロな細胞レベルで見ると、驚くべきスピードで中身が入れ替わっている。

具体例を出しましょう。

消化管:腸の壁など。数日で新品に入れ替わる
肌(表皮):およそ28日〜45日(ターンオーバー)ですべて刷新される
血液(赤血球): 約120日で入れ替わる
骨:非常にゆっくりだが、破壊と再生を繰り返し、数年単位で全身の骨が作り変えられる

日々、古い細胞やタンパク質は壊されて老廃物となり(異化)、食事から得た栄養で、新しい組織がゼロから作り直されています(同化)。

つまり、今日食べたものが、明日のあなたの「筋肉」になり、「皮膚」になり、「ホルモン」や「神経伝達物質」やら、様々なものとなって、体が「テセウスの船」よろしく作り替えられているわけです。

食べ物として体に取り入れるものを「家の建材」に例えて話をしましょう。

柱や壁となる主要建材。これはアミノ酸(タンパク質)が該当します。ビタミン・ミネラル(補酵素)なんかは、建材を固定する釘やナット、あるいは工具といった感じですね。糖質・脂質は、工事を動かすための燃料(電気・ガソリン)的なものです。

体は毎日新造していくので、建材や燃料の供給がストップすれば、備蓄のものを使います。では、それらが尽きたら?

工事がストップするか、欠陥工事になるのは、自明の理ですね。

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飢餓スイッチが生む不健康カスケード

「食べない」という選択をした瞬間、体はそれを「飢餓(緊急事態)」と認識します。

脳は活動に大量のブドウ糖を必要としますが、食事からの供給が絶たれると、体は自らの組織を分解してエネルギーを作り出そうとします。

そこで体は、飢餓に対して真っ先に、燃費の悪いエンジンである筋肉を「栄養源」として、リストラ対象にしようとするわけです。

基本的に体にとって、筋肉は維持コスト、つまり基礎代謝が高い贅沢品ですから、飢餓状態では「生き残るために、カロリーを食う筋肉をリストラしよう」と判断され、代謝が落ち、痩せにくく太りやすい体質へと変化します。

短期の絶食時では、肝臓グリコーゲンを使って、それらが枯渇後、糖新生の材料としてアミノ酸(筋肉由来)が行われるので、影響は少ないですが、長期的な絶食ダイエットは、本格的に体を衰えさせます。

筋肉分解と脂肪分解が同時並行で行われるのですが、長期的な絶食は脳が「今は飢餓モードである」と考えて、体の糖新生を活発にします。もちろん糖新生は常に行われている体の代謝機構ですが、絶食・急激な糖質不足で特に強まるという感じです。

これは「筋肉(アミノ酸)」を分解し、それを肝臓でブドウ糖に作り変えて脳へ送る、ということ。

脳ファーストの私達の体は。筋肉を脳に捧げる仕組みをもっているので、急な絶食や栄養制限ダイエットをやると、この糖新生スイッチが入ってしまうことがあるのです。

もちろん脂肪もケトン体などにして無理矢理脳が使うことができるので、筋肉と同時に脂肪も脳の栄養として使うことができますが、ケトンで動く脳は回転率が悪く、イライラしやすいとか、情緒面などにも影響があると言われてます。

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「食べない」は最悪の選択肢

そんなわけで「痩せるため」に「食べない」という選択肢は、最悪だと言えます。
まあ、1、2日の絶食は、今の飽食の時代にはむしろ良いことが多いけど。

ダイエットは「適度な食事制限」であり、「食べない」ではないというのは、体の働きから考えれば当たり前なわけです。

「欠陥建材」で作られる、ボロボロの体。栄養不足の状態で、無理やり新陳代謝を行おうとすると、体は「廃材」や「足りない材料」で組織を作らざるを得なくなります。

その結果はというと、悲惨なものです。

まず、肌・髪の劣化は著しいものに。
肌の弾力を支えるコラーゲンや、髪の主成分ケラチンの合成が阻害され、ガサガサの肌、抜け毛が発生します。脂質も不足すると髪もバサバサになる。

そして、ケガと病気のリスクが高くなります。骨や腱、免疫細胞(抗体)もタンパク質から作られますから、粗悪な材料で作られた組織は強度が低く、簡単にケガをしたり、病原体に勝てなくなったりするのです。

こうした「食べないダイエット」の末、審美医療を受けたり、わけのわからないサプリを飲んだりするのは、屋根のない家に高級家具を置くようなもの。「屋根や床といった基礎構造を破壊して、柱を薪(まき)として燃やしながら暖を取っている状態」なわけですから。

いくら高価な化粧品や服(家具やインテリア)を持ち込んでも、雨風をしのぐ屋根(食事)と、家を支える床(運動)がなければ、そこは決して快適な住処にはならんやろ・・・というわけです。

「美しさ」や「健康」とは、適切な建材(栄養)と、適切な施工(運動)によってのみ作られる、強固な構造物の上に成り立つものなのです。

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著者紹介

くられ
くられ

作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku

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