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【科学と反知性主義】ウソと虚栄の闇堕ち沼

リテラシー
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初出:2025/06/28
改稿:2025/06/29

Joker
Joker

ニセ科学とか陰謀論みたいなのがどうしてああも広がってるんでしょうかね。

くられ
くられ

そりゃー、真面目にやるより見返りが多いからねえ。

Joker
Joker

分かってて騙してる連中ばかり、と・・・世知辛いですね。

くられ
くられ

その先に未来はないんだけどね。

POKA
POKA

はっはっは! 辛気くさいぞ。世の中がどうあれ、我が道を行けばいいのだ!!

くられ
くられ

そりゃPOKAはそうだろうけどさあ(笑)

POKA
POKA

小うるさい連中など、ちょっと「ピーーーー」してやれば「ピーーーー」

Joker
Joker

発想がテロリスト過ぎてお見せできないじゃないですか、もう・・・

くられ先生の「科学論」

自分は「科学とは何なのか?」という話を、よくしています。

たとえば、「ワクチンは毒だからなにも打ってはいけない」とか、「がんは放置すれば治る」とか、「米のとぎ汁を撒けば放射能が消える」とか、そういった話を聞いたとき、理系・文系問わず「いやいや、さすがに変だろ」と感じる人は多いと思います。

実際、それらは科学的な根拠に基づいて否定されているものです。

ただし、すべての分野で専門知識を持って正しく判断するのは、現実にはとても難しい。

ウソは会話の反則技ですから、その場で回答できないような、でっちあげのウソはいくらでも並べ立てることができます。

だからこそ、ウソはその場しのぎの反則技なのです。

ウソをつく人を信用してはいけないというのは、1つのウソを見抜いても、他のウソで逃げることができるから。なので信用できないのですが、彼らはウソをつくプロですから、非常に上手い。実際に詐欺容疑で捕まった人も、見事な責任逃れをしている場合が結構あります。

よって、「それっぽい言い回し」や「それっぽいウソデータ」によって、思わず「そうかもしれない」と信じてしまうことがあるんです。

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ウソつきのウソを否定する莫大な手間

この「そうかもしれない」を完全に否定するのは、とても大変です。

例えば「ワクチンは危ない」という話を完全否定するためには、まずは免疫学の教科書を一通り・・・免疫学を理解するには、当然、基本的な生理学の知識が必要ですし、感染症の知識も必要になります。

こんな感じで、知識がゼロの状態から「それはおかしい」と、ウソのプロを否定するためには、最低でも数百時間の勉強が必要です。

逆に言えば、ネットで数時間、どこの誰なのかも分からない人の動画を見ただけで、数百時間、数千時間の勉強を積み重ねた人を否定するような話にはならないわけです。

「怪しい言説」を堂々と「常識」のように語る人達は、基本的に一発逆転が好きな人が多い。

彼らの中の世界、ウソの世界では、自分にとって不都合な現実は何も変わらないものの、いくらでも一発逆転していると信じることができます。

こういう人達は、騙しのプロからすれば、最高の信者であり、養分であり、捨て駒として便利なわけです。ギリギリまでウソを言っておけば、己のプライドのために信じてくれるからね。

もともとニセ科学や反知性集団っては、草の根レベルでちょっと怪しいグッズや薬を売って小銭を稼ぐくらいの、まあ言ってしまえば“軽度の社会悪”でした。だいたいどこの地域にも怪しいオカルトサプリやグッズを売って小銭を稼ぐ悪党はいたのです。

でも、コロナ禍という未曾有の社会的混乱が起きたことで、こういった反知性主義が“メインストリーム”になりかけている、というのが今の現実です。

科学の世界って、正しく向き合おうとすればするほど本当に厳しい。

長い時間をかけて知識を積み上げ、努力して専門性を磨いても、新しい発見や成果がすぐに評価されることなんて、めったにありません。

ましてや、「世界を変えるような発明」なんて、才能と努力と運のすべてが揃って、ようやく実現するものです。そしてそれがどれほどすごいことだったとしても、一般にはその価値がなかなか伝わりません。

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注目を集めやすい「反知性主義」

その一方で、陰謀論や「反ワクチン」「反教育」などの主張は、なぜか簡単に注目され、「すごい」と持ち上げられることがあります。

特に、真面目に勉強してきたのに報われなかった、社会的な承認を得られなかったと感じている人が、「先生」と呼ばれ、承認される世界に転生してしまう。これは、意外とよくある話です。

大事なのは、彼らが本気で反科学を信じているのではなく、「自分がチヤホヤされるために」そういう主張を利用している、という点です。

「いや、でもそれって一部の変わった人の話でしょ?」と他人事のように思っている、そこの陰キャの君!(笑)。

自分も含め、我ら非モテ陰キャの民すべてに関係ある話なんだ、よく聞いてくれ。

現実に、医師の資格を持ちながら反ワクチンやニセ科学を広め、「教祖」的な立場で影響力を持つようになった人もいます。科学的な知識があるぶん、普通の世界では評価されなかった人が、その知性を“閉じた世界”で最大限活かして承認欲求を満たしてしまう、おまけにお金も稼げてしまう。
 
それが反知性社会の一番やっかいなところです。

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拗らせた承認欲求で人が死ぬ現実

しかし、そんな承認欲求が行き着いた先は、時に命を奪うような害悪にもなり得ます。

たとえば、乳幼児がワクチンを受けられないことで、どれほど死亡率が上がるか。それは医療体制の整っていない国の現実を見ればすぐにわかります。ただし、人間は直接自分の目で見ないと「実感」できない生き物でもあるのです。

日本では、水道水を安心して飲めることのすごさをあまり意識しません。でも、海外で暮らしたことがある人なら、そのありがたさがよくわかるはず。そうやって気づかないうちに享受している「当たり前」の平和に、反知性のムーブメントは静かに入り込んできます。

しかし、そうしたウソでできた社会を望む人が社会を運営したらどうなるのか・・・それはとても恐ろしいことになるのは分かりますよね。

そしてこれは、今この文章を読んでいるキミにも無関係な話ではありません。

どんなに優秀な道を歩んでいたとしても、「ちゃんと評価されない」「自分の力が認められない」と感じたとき、甘い言葉で迎えてくれる“沼”が待っています。

そう、陰キャで非モテで、理学の道半ばで心折れたその瞬間。インチキ沼は、真冬に飲む「あたたか〜い」自販機のコーンスープのような優しさで、君を迎えに来ます。

自分の周りにも、そうやって沼に沈んでいった人がいます。過去に大きな成果を挙げた先生でさえ、晩年の孤独の中、「先生!先生!」とチヤホヤされる心地よさに取り込まれていった姿を、何度も見てきました。

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科学とは未来を創るもの

でも、だからこそ、ちょっと立ち止まって考えてほしい。

科学って、なんのためにあるんだろう?

科学は、未知を照らし、世界を少しずつ良くしていくための道具です。そこに善悪はありませんし、失敗することもあるでしょう。でも、その失敗すら次に活かせるのが科学の強さです。

ウソでは、未来は創れません。

もし疲れたなら、休んでもいいし、道を変えてもいいと思います。しんどいときに無理する必要はありません。でも、そのうえで「またやってみようかな」と思ったら、いつでも科学の世界は君を待っています。

科学の世界は、ウソが絶対に許されない場所です。

論文は実名で出すものだし、再現性や批判の目に常にさらされます。ときには、自分はウソをついてないのに「ウソつきだ」と言われることだってあります。

しかも、世間は科学者に対して、ものすごく大きな責任を求めます。まるで白衣を着た人は聖人じゃなきゃいけないみたいな空気さえある。

でも、そうやって社会の期待に応えすぎると、自分自身を見失うことがあります。だからこそ、ストイックで真面目な人ほど、突然カルト的な思想に傾いてしまうことがあるんです。

それは「真理に目覚めた」わけではなく、ただ自分の自尊心を守るために、自分にも他人にも“ウソ”をつくことを選んでしまっただけなのです。

科学の厳しさに打ちのめされて、自分の限界を感じたとき。そこでその心の隙間をウソで埋め始めたら、もうその瞬間に、社会の一員ではなくなってしまいます。それが違法でなくても、やっていることは詐欺師や詭弁家と変わりません。

ウソでは、未知は照らせません。
ウソでは、未来は創れないのです。

いまアメリカでは、教育の土台が崩れ始め、反知性の波が本格的に力を持ち始めています。その影響はすでに、公衆衛生や感染症対策の現場にまで及んでいます。

日本でも、決して他人事ではありません。だからこそ、未来をつくっていく君たちには、「科学には正直」であってほしいのです。

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著者紹介

くられ
くられ

作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku

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