初出:2019/11/12 Vol.354 ワクチンを打つべきなのはどうしてか?

ゲホ、ゴホッ・・・ぶえっくしょん!

おやJoker、風邪かね? そろそろインフルのシーズンだし、気をつけた方がいいよ。

あ、はい。とりあえずさっき麻黄湯を飲んでおきました。ちょっと鼻と喉がやられただけだと思いますが、悪化するようなら素直に医者に行きます。

ならいいけど・・・食欲は? 食べられるようなら、特製の鶏卵うどんを作ってあげよう。

ああ、ありがたいです。ショウガたっぷりでお願いします。

はっはっは。ちくわの天ぷらも一緒に頼む! しかし風邪とはな。ここに風邪など寄せ付けなくなる強化パーツが・・・

あー、悪魔でサイボーグとかいささか盛りすぎになるので遠慮しておきます。
ワクチンは社会全体を守るためのもの
インフルエンザのシーズンですね。インフルエンザのワクチンは受けましたか?
特にどこかの寒い中並ぶ神社やコミケのような大人数のイベントに行く人は必ず受けましょう。いや、帰省する人でさえ受けておくべきです。
インフルエンザワクチンに限っては、受けたからといって必ずインフルエンザにかからなくなる・・・というわけではありませんが、それでも受けるべき理由があります。
まず、重症化する危険性と死亡率がぐっと下がることで、この時点でメリットはゼロではないわけですが、実は個人のそういう都合だけでなく、実は一番重要なのが、ワクチンというものは「社会全体を守るためのものである」ということ。
この認識が極めて大事なのです。
それというのも、例えばインフルエンザワクチンは卵アレルギーの人や乳幼児には打つことができません。卵アレルギーの人や乳幼児はインフルエンザウイルスに晒されると当然ワクチン未接種の人より感染率は高くなります。
乳幼児の場合はそれが生涯残る脳の後遺症などになることさえあります。
流行マップから見る実際の感染状況
感染・・・というのがピンとこない人が多いと思うので実際に流行マップをみてみましょう。
このURLは2017〜2018年のインフルエンザの流行分布です。
まず最初に新潟でインフルエンザがありますね。本来ならば陸続きで感染は広がりそうなものですから、新潟の次は隣の富山か山形、群馬・・という感じですが、実際は宮崎県にいきなり発生しています。
新潟と宮崎を移動する人というのは極めて限られると思うので、おそらく一人二人の罹患者が飛行機で宮城県にピンポイントでウイルスを運んだことを示してると思ってもよいでしょう。もちろん厳密に調べたわけではないので偶発的な可能性はありますが。
そしてあとは人の流れのまま一度広がりだしたインフルエンザウイルスは瞬く間に日本中を真っ赤に染めていきます。
「免疫をリセットする」麻疹の脅威
なので、「別に打っても打たなくてもかかるし、お金もかかるから俺はいいや」みたいな感じで、打たずに罹患して、それをワクチンが打てない人に感染させてしまうリスクの部分がヤバいのです。
毎年、200〜300人の乳幼児が、体が不自由になるなどの重い後遺症を持つ、インフルエンザ脳症になっています。
この中の何人か、何十人かは、もしかしたら、誰かがワクチンさえ打っていれば、インフルエンザ脳症にはならなかったかもしれないわけです。
インフルエンザは、ワクチンで100%押さえ込める病気ではないので、ワクチンが万能だとは言えません。よって運否天賦の部分もあるでしょう。
しかし、これが麻疹(はしか)となると、別次元です。
麻疹(はしか)のワクチンはインフルエンザとは違い、一回の接種で免疫が付かない人もいるものの、正しく接種すればその効果はほぼ100%で予防効果は段違いに高い。
その優秀なワクチンの効能で忘れられるくらいに撲滅に成功していたヤバい病気、麻疹(はしか)がこの国にまた広がりつつあります。しかも反ワクチンとかいう病原体の味方まで湧いてきて非常によろしくないですね。

麻疹(はしか)に関しては免疫をリセットするというとんでもない副作用が最近発見されています。つまり他のワクチンやなんとか持ちこたえた病気に対する免疫情報を白紙に戻してしまうということ。
にわかには信じられない、とんでもない能力です。
著者紹介

サイエンス作家、タレント。シリーズ累計20万部の「アリエナイ理科」シリーズを始め楽しい科学書の分野で15年以上活躍。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては科学監修を務め、フィクションと実科学との架け橋として活躍中。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様」「MATSU」ぼっちの出演や、YouTubeで80万再生を超える科学動画を「主役は我々だ!」と共同製作も。仕事の依頼や関連情報は https://twitter.com/reraku
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インフルエンザワクチンの話は他にも記事があります
風邪薬や救急箱の話。
ただしインフルエンザだと使えない解熱鎮痛剤とかあるので、医者にかかりましょう。
公衆衛生の基本は手洗いうがい。そしてハイター。
著者紹介

サイエンス作家、タレント。シリーズ累計20万部の「アリエナイ理科」シリーズを始め楽しい科学書の分野で15年以上活躍。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては科学監修を務め、フィクションと実科学との架け橋として活躍中。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様」「MATSU」ぼっちの出演や、YouTubeで80万再生を超える科学動画を「主役は我々だ!」と共同製作も。仕事の依頼や関連情報は https://twitter.com/reraku
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