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戦争で初めて使われた化学兵器・もっとも身近で危険な毒ガス「塩素」

生活と科学
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初出:2020/08/18 Vol.394 もっとも身近で危険な毒ガス 塩素
改稿:2023/05/17

くられ
くられ

本日は、混ぜるなキケンで有名な、もっとも身近だと言える毒ガス、塩素について解説していこう!

Joker
Joker

毒ガス・・・先生はそういえば、塩素とか硫化水素とかさんざん被曝してますよね。

POKA
POKA

はっはっは。硫化水素の時は実にケッサクだったな!

くられ
くられ

塩素も実験中にアレでソレな感じで食らったからな。自慢ではないが、毒ガスを吸い込みそうになると息を止められる特技がある。

Joker
Joker

それだけ食らっているってことですよねそれ・・・普通の人より明らかに耐性が付いてますよね。

POKA
POKA

はっはっは。電撃と毒ガスは慣れるものだ!

Joker
Joker

慣れたくないなあ・・・

くられ
くられ

まあ、実際んとこ、有機リン系の神経ガスでさえ、人間は慣れるものだからな・・・研究してた博士はピンピンしてたのに見学者がバタバタ倒れたなんて話もある。

身近な毒ガス・塩素

トイレ用洗剤の混ぜるなキケン。どうしてキケンなのかといわれれば塩素がでちゃうからだよ・・・というのは有名な話ですね。

じゃあどうして塩素が危ないのか?

今回はこれについておさらいしておきましょう。何がどう危ないのかを知るのは口で危険だなんだと言われるより何倍も重要な事ですしね。

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最初の化学兵器「塩素ガス」

実は塩素ガスは戦争では最初に使われた化学兵器です。

この塩素ガスが戦場に投入されたのは、1915年(大正3年)、ドイツ軍と連合軍(主にイギリス)とが睨み合うイープルという戦場。4月22日夕方、突如ドイツ軍によって塩素ガスの噴霧攻撃が行われました。

この時に用いられた塩素の量はなんと70トン、その発射された塩素は長さ6km、幅60〜900m、高さ2〜3mの巨大な雲となりました。

当時毒ガスに対する防御策などを何も持たないイギリス軍は1日にして死者5千人、重軽傷者1万5千人を出す大打撃となり、戦線を大きく塗り替えることとなったのです。

ま、翌年にはイギリスやフランスも塩素はもちろん、ホスゲンやらをガンガン実戦投入したので、別にドイツが毒ガス独壇場だったわけではないんですけどね。

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塩素の物性

閑話休題。塩素は黄緑色の気体で、原子番号17番、ちょうど周期表でも17族なので覚えやすい。ハロゲンのフッ素の下にあるハロゲンの代名詞とも言えるごくごくありふれた元素です。

工業的には、塩化ナトリウムから塩素と水酸化ナトリウムという形で大量に作られ、主にその化合物がありとあらゆる化合物に使われています。

1気圧0度での1リットルの塩素は約3.29g 空気に対して2.49倍の密度を持ち、よって放出されると空気を押しのけ地面を這うように広がります。

このため毒ガスとしても使い勝手がよかったと言えるでしょう。ちなみに沸点は-33℃。つまり常温では気体です。

6〜8気圧にすれば常温でも液体になり、大気圧下でも-40℃で液化するので、簡単なコールドトラップで液体塩素を作り実験に使うことも難しくはありません。-102℃で固化します。

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塩素の毒性

また塩素自体は水によく溶けます。0℃の水1リットルに対して8.18gほどです。-8℃以下にすると、ソーダ的に溶けて常温に戻ると塩素がめっちゃでるヤバい氷の出来上がり。

塩素は呼気として入り込むと、激痛と痙攣を気管支内に起こし、その結果、呼吸困難を起こし、毒ガスとなるものです。

表を見て貰えば分かるように、その毒性は決して低いものではなく、簡単に発生させれる上にありふれた物質なので油断をしていると、けっこうアッサリひどい障害を負ったりするので注意。

高濃度の塩素を被爆して死んだ場合は、顔は褐色を帯び、唇は青ざめ、末梢の皮膚はやや緑がかった色となり死亡します。

とまぁ危ないガスなのでやっぱり迂闊に作ろうなんて混ぜるなキケンをしないほうが良いのである。

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コラボ動画「催涙剤の合成」ガチ実験シリーズ

さて、そんな塩素ガスですが、それを材料に催涙剤を作ろう、というホモサピ氏とコラボしたガチ実験動画があります。

この動画でまさに「混ぜるなキケン」をやっているわけですが、ヤバいのでガッチガチに設備を整えた上でやっているわけです。その様子が気になる方はぜひ動画をご覧ください。

※なお市販の催涙スプレーはカプサイシンベースのものが主流です。

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塩素ガスとか硫化水素の話

かつて、くられ先生とPOKA先生が生放送で塩素やら硫化水素やらの話題で盛り上がっていた部分が、公式の切り抜き動画として公開されています。

後半ピー音まみれですが気になる方はぜひ(笑)

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著者紹介

くられ
くられ

作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku

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では、このように危険な塩素と、爆発性のある金属であるナトリウムの化合物である塩化ナトリウムは、なぜ口に入れても平気なのか・・・というのは動画をどうぞ。

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冒頭茶番、神経ガスに慣れてしまった研究者の下りはガチです。dplayの記事で軽く触れております。

https://www.dplay.jp/article/0000048334

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