初出:2018/05/15 Vol.276 電子レンジでモノが温まる仕組み
改稿:2020/07/18

先生、ちょっと休憩してコーヒーでも飲みましょう。用意しますよ。

いいね。MCTオイルと難消化性デキストリンはそこにあるから、ダイエットコーヒー仕様でよろしく。

はいはい(ブーン・・・チン! ブイィィィーーーン)。出来ましたよ。

いやー、まともに作ると面倒なものが、レンジのおかげですぐ出来る。

電子レンジがあれば、プラズマ発生実験も、宝石の作成実験もできますしね。

うむ・・・というわけで今回は、電子レンジの仕組みについてちょっとご紹介していこう。

電子レンジといえばかの「地上最強のコック」が仕込みをしていたな、あれはスチールウールに・・・

それ以上いけない!
電子レンジでモノが温まる仕組み
科学に興味を持つきっかけにもなる「素朴な疑問」。身近なものがどういう仕組みで、どういう理屈で動いているのか、というのは、とても大事なものだと思うのです。
これこれこういうことを勉強だから受験に必要だからとただ覚えさせられるのとではまったく違ってくると思います。
その辺を踏まえた上で、拙著「アリエナイ理科ノ大事典」の前書きなどで「電子レンジでどうしてモノが温まるのか、その仕組みさえ、学校の教科書には載っていない」といった事を述べました。
しかし、ツッコミを入れておきながら、よくよく考えてみると自分の本でも解説はしておりませんでした。
日頃から意味不明な実験なんかでふざけてばかりですが、たまにはまともな事もと思いますので、今回は電子レンジでモノが温まる仕組みを、わかりやすさ優先で解説していこうかと思います。
マイクロ波で水分子を振動させる
たぶん多くの人が「電子レンジの中では電波で水分子を振動させて加熱する」というくらいは知識があるかと思います。
電子レンジの中で使われている電波というのはマイクロ波という波で、波長的には赤外線のさらに向こう側の波です。
そういう意味では光(可視光だけが光にあらず)なわけですが、非常にエネルギーの強い波なので、分子を揺らすことができるわけです。
この揺らす・・・というのは何が起きてるかというと、例えば水はH2Oで、その水には電気的にプラスの部分とマイナスの部分があります。
このような偏りのある液体を極性溶媒というのですが、極性がある物質にマイクロ波があたると吸収されます。
しかもマイクロ波自体は1秒間に24億回も極性が反転、つまりプラスとマイナスが逆になります。
つまり、分子を寄せては突き飛ばすということを行うので、分子自体のエネルギーが蓄積されていき「熱」となるわけです。
いささか極論的で語弊もあるのですが、わかりやすさ優先で「熱」というものが何かと説明するのなら、それは「分子の振動の度合い」だと言えます。
絶対零度がすべての原子の振動が止まった状態であり、そこから「振動の度合い」を「温度」として我々が認識しているわけです。
電子レンジと温度・・・というだけで、これくらいモノが見えてくると、よりいろいろなものが面白く見えてくる・・・かもしれません。
またこの辺の事を詳しく知っていくと、電子レンジを使った実験などにも辿り着く訳です。
今回は極めて簡略な説明でしたが、興味を持つきっかけになれば幸い。
著者紹介

サイエンス作家、タレント。シリーズ累計20万部の「アリエナイ理科」シリーズを始め楽しい科学書の分野で15年以上活躍。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては科学監修を務め、フィクションと実科学との架け橋として活躍中。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様」「MATSU」ぼっちの出演や、YouTubeで80万再生を超える科学動画を「主役は我々だ!」と共同製作も。仕事の依頼や関連情報は https://twitter.com/reraku
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薬理凶室対談動画で、自分、くられと、相方にPOKAを迎えてのトークで電子レンジと実験について触れました。
科学動画でも電子レンジを使った回があります。
可視光だけが光じゃない、ということで、生活に密着している見えない光の話
熱と光の話はこたつの話もどうぞ
また、電子レンジと同列にエアコンの仕組みも本の前書きで触れたことですが、仕組みの解説は以下で少々。
お手軽ダイエットコーヒーもレンチンあってのもの。科学の力は偉大である。
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