初出:2020/05/12 Vol.380 消費期限と賞味期限の違い
改稿:2026/09/06

本日は、消費期限と賞味期限の違いについて解説していく!

食品衛生的な話ですね・・・ところでこの肉はなんですか? メッチャうまそうですが・・・

いわゆる熟成肉というモノだな。普通に生肉を放置すると傷むわけだが、細菌の管理をきちんとすれば腐らず熟成されて美味しくなるわけで、この辺に消費期限・賞味期限についての関連があるわけでだな。

はっはっは。細かいことは記事の方を読んでもらえば良かろう! 今はこの肉を食べるのが最優先ではないか?

これほどいい肉ですから、やはりここは赤ワインを・・・

頼むから人の話聞いてくれない? いや、食ってからでもいいけどさ。
消費期限と賞味期限:そのラベルの裏側にある科学とルール
食品のパッケージに印刷されているものは、商品名、キャッチコピー、彩り豊かなイラスト、そして食品ラベルだけでなく、もっと地味に刻印されているもの・・・そう、賞味期限です。
ものによっては消費期限と書かれています。今回はこの消費期限と賞味期限について、これらの言葉の裏側、誰がどういう根拠で保証しているのか?
そのリアルを見ていきましょう。
消費期限と賞味期限。どちらも同じような言葉に思えますが、現在は「食品表示法」というルールのもと、明確に運用が分かれています。
消費期限の定義
まず消費期限は、弁当、精肉、生菓子、生麺類、パン等、おおむね製造日を含めて5日以内には傷んでしまう食品に印字されるものです。
適切な冷蔵状態が維持され、かつ未開封の状態でその期限内に食べる限りは安全に美味しくいただけます……という意味になります。
当然、猶予期間は設けてあり、消費期限を1分1秒越えた時点で急激に腐り出すわけではありません(笑)。
ここには「安全係数」という考え方が使われています。微生物検査などで「ここまでなら絶対に安全」と弾き出した限界の日数に対して、0.8や0.9といった係数を掛け、あらかじめ少し短めに期限を設定しているのです。
冷蔵庫の中で日付を超えただけで即座に捨てる人もいますが、冷蔵庫の温度や衛生状態……冷蔵庫の中が不衛生なご家庭も案外多い、といった諸々を含めて、余裕をもって決められているわけです。
逆に言えば、夏場のカンカン照りの中を1時間くらいぶらぶら持ち歩いた生鮮食品は、再度冷蔵庫に入れたとしても、想定外の細菌繁殖が進んでいて、アウトな状態になっていることは、珍しくありません。
ちなみに以前は主に食品衛生法で運用されていましたが、2015年施行の食品表示法(食品表示基準)以降食品表示法へ統合・規定されています。それに伴い、諸々がアップデートされていますので、記事もアップデートしました(2026 9.06)
賞味期限の緩さ
賞味期限というのは、インスタント麺やスナック菓子、レトルト食品などに付けられるもので、法的には「定められた保存方法であるかぎり期待される品質が十分のもの。ただし該当期間を超えた場合があってもこれらの品質が保持されていることがあるもの」という「ただし」が付いています。
要するに、何時何時の期限までは保証しますが、当面の間、食べる分には特に問題はないですよ・・・というユルめの品質保証となっています。
この厳しさや緩さはどこからきているのでしょうか?
熟成と腐敗と細菌
賞味期限の基準の根底にあるのは,「細菌」です。
そもそも完全無菌の食品など、日常生活には存在しません。真空パウチに入れ、人間が即死するレベルの放射線(γ線など)を照射すれば、完全無菌の食品を作ることはできるでしょうが、日本ではジャガイモの発芽防止目的以外での食品への放射線照射は、法律で原則禁止されていますので、そんな力技は使えません。
故に、衛生管理を徹底した食品工場であっても、食品にはどこからともなく菌が入り込んでいます。
逆に言えば、細菌のコントロールさえできれば、生肉であっても劣化は相当遅くなります。実際に高級牛肉の多くは、無菌状態にするのではなく、温度と湿度を厳格に管理した冷蔵庫内で、1ヶ月以上「熟成(ドライエイジング)」させたものが流通しています。
これは肉自身の持つ自己消化酵素を働かせつつ、有用な微生物の力を借りて腐敗を抑え込み、旨味を引き出すという高度なコントロールの賜物です。
消費期限・賞味期限とは、言い換えれば「食品中の細菌が、食品自体に悪影響を及ぼすまでの時間」を意味しています。
期限設定の厳格化
これらの期限は、かつては製造者の裁量に委ねられている部分もありましたが、現在は消費者庁のガイドラインにより、微生物試験や理化学試験に基づく「科学的・合理的な根拠」が義務付けられるようになっています。
つまり、「スーパーの店長が、自分の勘で刺身の賞味期限を3年先に設定して販売する」なんてことは現在では明確な食品表示法違反となります。
昔でもこんな極端なものは、当然、食中毒を起こすのでダメだったのですが、悪影響が出なければ、ある程度、許容範囲が大きかった時代もあったのですが、今は完全にダメになった、ということです。
客観的データなしに期限を付けることはできないのです。
万が一、デタラメな期限で食中毒を出せば、当然ながら営業停止などの厳しいペナルティが課されます。消費者庁のガイドラインにより、期限設定には微生物試験、理化学試験、官能試験に基づく「科学的・合理的な根拠」が義務付けられており、これを逸脱した設定は食品表示法違反となる・・・と変わっています。
このペナルティは段階があり、最初は 数日間の営業停止処分(通常3日〜1週間程度)。原因究明と施設の改善、従業員の再教育が完了するまで解除されません。また販売物の場合、製品の回収・廃棄命令が出た場合、回収と廃棄が命じられます
そしてさらに悪質である、または改善が見込めない場合、営業許可の取り消しがあります。
いずれも店名の公開がなされるので、ニュースになることで、さらに社会的なペナルティも自然に発生します。
惣菜を「蘇生」させる裏技の罠
そんなわけで、ひと昔前の都市伝説として、「スーパーで期限切れになったコロッケを再度揚げることで賞味期限を蘇生させて陳列する」といった話がありました。
現在、これをやると「期限の偽装」となり、一発でアウトになります。
「もう一度高温の油で揚げて殺菌すれば安全だろう」と思うかもしれませんが、それは大間違い。一旦細菌が一度食品内で増殖し、エンテロトキシンなどの毒素を作りだした場合は、再調理しても毒性が消えることはないため、危険性が排除出来ない・・・と考えるようになっています。
食品関連の法律は大きな事故があると、いっきにアップデートされるので、何か調べる際は、是非最新の情報を調べて参考にするようにしましょう。
長くなるので次回に続きます。次回は「消費期限切れの食品の中で起きていること」。
著者紹介

作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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