初出:2019/01/15 Vol.311 酸味料を台所に増やす
改稿:2020/04/18

おや、なんかたくさんお茶菓子がありますね。ティータイムですか、先生。

おお、良いところに。差し入れでたくさん頂いてしまったのだ。今、紅茶を入れるから一緒に食べよう。

あ、じゃあ、カップを・・・ああ、この辺のビーカーで良いか。

レモンを切らしているんだが、クエン酸と酒石酸のどっちが良いかね?

あ、じゃあ、酒石酸でお願いします。今日は平和でいいですね。

POKAは今日は実験室に篭ってるみたいだしね。まあ、毎度毎度爆発させられても困る。

まあ、あとでお茶菓子は差し入れにいきましょう・・・実験室が吹っ飛ばなければですが。
※傍目には実験にしか見えなくても、穏やかなティータイムです。
酸味料を台所に増やす
最近はネット通販で本当にいろいろなものが買えるようになりました。酸味料などの食品添加物も、手軽に手に入ります。
試薬瓶を台所に置いていると、ビジュアルがいかにもマッドな感じになりますが(笑)、酸味料は使い方次第で食べ物・飲み物の味わいがランクアップします。
中には「なんだか体に悪そう」という忌避感を持つ方もいると思いますが、今回紹介する酸味料の類も食品添加物で、ごく一般的に、当たり前に食品に使われています。
さて、本題から逸れてしまいましたが、今回は手軽に酸味を付けるのに便利なクエン酸をはじめ、酒石酸、アスコルビン酸などをご紹介していきましょう。酸味料のバリエーションが増えると、食卓も豊かになります。
クエン酸
クエン酸は、食品への利用としては、レモンやオレンジなどの柑橘系の酸味を演出するには必要不可欠な存在で、清涼飲料水だと入っていないものを探すのが難しいくらいメジャーなものです。
実は薬局にも普通に売っており、たいへん安価で手に入ります。数百円もあれば300gくらいの原末が買うことができるでしょう。もちろん、ネット通販でも手に入ります。
単体では非常に酸っぱく、後口が爽やかな酸味なので、酢の替わりに使ったり、酢のものを作る際に少し添加することで、口当たりが良い酸味を付けることができたりもします。
しかし、クエン酸だけでは非常にアッサリした酸味しかないために、清涼飲料水などを作る場合には、他の酸味料と併用しています。
食品以外の用途として、ポットのこびりついた汚れなんかもクエン酸の高濃度溶液につけておくと取ることができます・・・というか、ポットの洗浄剤の成分もまたクエン酸なわけですね。
台所に置いておけば、ちょっとした酸味付けのときに大役立ちします。また紅茶に少し入れればレモンティーのような酸味を付けることができ便利です。小さな小瓶にいれて持ち歩いておけば、外出先でただの紅茶をその場でレモンティーのように味を変えることができます。
酒石酸
酒石酸は数ある酸味料の中でも最も深い酸味を持つもので、とくにオレンジやブドウなどのコクのある酸味を演出するのに欠かせない酸味料です。
名前の由来は、ワインを作るときにブドウに含まれるカリウムと反応して、難溶性の結晶としてこびりつく、酒石から分離されたことからこの名前が付けられました。
その水溶液は、たいへんに「高級な」酸味を持ちます。クエン酸を水に溶かしただけのものと、酒石酸のものを比べるとその差は歴然で、そこいらの高級食酢なんかより、さらに奥深い酸味を持ちます。
使用法としては、酸味の必要な料理に、レモン汁のかわりに加えたり、レモンティーの酸味に使えば高級な味になりますし、酢物の料理にも添加することで、グレードの高い酢で料理したかのような高級感を出すことができます。
アスコルビン酸
アスコルビン酸というと馴染みが薄いかもしれませんが、ビタミンCのことです。
白色の粉状の酸味料であり、水に溶けやすく、もちろん酸性で、舌に残るじんわりとした酸味を持ちます。
酸味は、酸味料のなかでは低い部類に入ります。他の酸味料と混ぜると酸味のピークに複雑性が生じるので、携帯用酸味としてクエン酸と混合したものを持ち歩くのもアリです。
レモン何個分のビタミン・・・というのは、このアスコルビン酸がレモン1個あたり20mg換算して含まれている・・・と計算されています。
アスコルビン酸20mgは耳かき1杯程度の量。
著者紹介

サイエンス作家、タレント。シリーズ累計20万部の「アリエナイ理科」シリーズを始め楽しい科学書の分野で15年以上活躍。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては科学監修を務め、フィクションと実科学との架け橋として活躍中。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様」「MATSU」ぼっちの出演や、YouTubeで80万再生を超える科学動画を「主役は我々だ!」と共同製作も。仕事の依頼や関連情報は https://twitter.com/reraku
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また、添加物で悪者にされがちな「亜硝酸ナトリウム」の話など、記事抜粋もあります。
砂糖の使いこなし方
「ケミカルクッキング」の記事一覧は以下です。



また、アスコルビン酸・・・ビタミンCを美味しく取れる「ビタミンラッシー」の記事があります。
科学動画で話題になった「バナナミルク」のレシピでも、アスコルビン酸が使われていました。
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