天ぷら火災の仕組みを科学の目で見る:実際に発火実験をしてみた件

生活と科学
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初出:2018/11/20 Vol.303 天ぷら火災の科学 その1
改稿:2021/08/09

Joker
Joker

先生、コンロの上の鍋で油が煮えたぎっていますが・・・

くられ
くられ

天ぷら火災はどのようにして起きるのか知っているかね?

Joker
Joker

・・・ああ、つまり実際に実験してみる、と。

くられ
くられ

うむ。鎮火のやり方も後でいくつかテストする予定。水とかぶっかけると大惨事だしね。

Joker
Joker

POKA先生の姿が見えないのがかえって不安なんですが・・・

くられ
くられ

火を使う以上おふざけはナシで。いやマジで。

※安全対策は徹底した上で実験を行っています。本当に危険なので安易に真似をしないでください。

天ぷら火災はマヨネーズで鎮火できるのか?

天ぷら火災にはマヨネーズ。

そんな話を聞いたことはないでしょうか。ある程度リテラシーのある人なら、かなり知られている話だと思います。

かいつまんで説明すると、天ぷら火災を起こしている油にマヨネーズを入れると速やかに鎮火するというものです。

読者の中にも、天ぷら火災がもし万が一起きたら、マヨネーズがあれば止められる・・・と思っている方も多いかも知れません。

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人為的に天ぷら火災を起こしてみる

さて、この話は本当なのでしょうか。

確かに、実際にテレビ番組などでは、天ぷら火災にマヨネーズを入れて鎮火する映像が流されていいます。あたかも「マヨネーズさえあれば万能!」と、そう思わせるような作りです。

この辺は、シナリオありき、ねつ造、やらせは当たり前の地上波テレビ番組のこと。何度も取り直し、編集して綺麗に消えた映像だけを流されていたかも・・・という疑いも沸いてきます。

そこで、今回と次回に分けて、実際に天ぷら火災を起こし、それにマヨネーズが使えるのかどうかを検証します。また他の台所にあるものでも鎮火できないのか、本当に消火器はいらないのか?

火災を科学の目で冷静に見つめ直していきましょう。

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天ぷら火災の仕組み

天ぷら火災はどのように起こるのでしょう?

天ぷら油はコンロの火によって際限なく加熱することができます。実験では100mL、200mL、300mLの油をそれぞれ加熱しました。

すると、100mLでは2分台で発火するのに対し、200mLでは6分、300mLでは11分以上かかります。温度を赤外線温度計で計測したところ、370〜410℃前後で発火している模様です。

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フライパンの揚げ焼きでも火災になることがある

消防白書(2010年)によると、天ぷら火災は時間帯を問わず起きています。また、必ずしも天ぷらでの火災ではなく、お弁当などの総菜作りで、フライパンなどで少量の油で揚げ物を行う際などに火災発生、というケースもありました。

食用油として一般的に用いられている植物油は、熱源で加熱され続けると際限なく温度が上がります。鉄と同じくらいの熱伝導率を有し、熱が水より上がりやすいのです。

さらに水の100倍近くエネルギーを溜めることができるため、一旦着火してしまうと、コンロの火を消すことができても、自分の熱で発火、温度上昇を繰り返すので、自然鎮火しにくいといえます。

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水をかけてはいけない理由

また水より軽いせいで天ぷら火災に水をかけると、水が突沸し火災が拡大します。また不安定な鍋(フライパンなど底の浅い鍋)だと、水をかける際にひっくりかえり、炎を床にぶちまけることにもなりかねません。こちらはマヨネーズが云々よりもずっと有名な禁忌ですね。

さらに近年の自然派思考(といっても香油を料理にドバドバ使うとかいう論外さんはさておくが)で、揚げ油にはオリーブオイルやコーン油を使うだとか、さらに少量で済ませるためにフライパンで揚げ焼きにする事例も増えたように思います。

これらは他の植物油より100℃近く引火点が低いため、発火点に至らずともコンロの火を拾って発火しやすいといえます。引火点、発火点を具体的に見ていきましょう。

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食用油の引火点・発火点

       引火点   発火点
食用調理油 約320℃  390℃
なたね油   354℃  424℃
ひまわり油  360℃  433℃
オリーブ油  225℃  343℃
コーン油   254℃  393℃

(引用:S56年9月東京消防発行「火災原因調査事例集」)
※食用調理油は複数の植物油を合わせたものとする

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発火実験

続いて、実際にコンロに火をかけて発火実験をしてみます。もちろん、屋内でやると本当に火災になりかねないので、ガスコンロを使って屋外で、かつ消火器などの安全対策をしっかり行った上で、です。

というわけで、より少量の油の方が発火までが早く、そして一度火が付くと瞬く間に大きくなりました。

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火災報知器の義務化、コンロの温度センサーが付いていることなどによって天ぷら火災自体は少なくなっているかと思いきや、過去20年ではその件数は横ばいで年間約3000件も起きています。

またIHコンロの普及などにより、裸火の取り扱いに不慣れな人も増えており、小さい規模の天ぷら火災でも、コップで水をかけるなどで火災が悪化することもあるようです。

今回はいったんここまで。次は具体的な鎮火方法について、実際に水をかけるとどれほどヤバいのか、マヨネーズ鎮火は本当に効果があるのかなどをご紹介しようと思います。

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著者紹介

くられ
くられ

サイエンス作家、タレント。シリーズ累計20万部の「アリエナイ理科」シリーズを始め楽しい科学書の分野で15年以上活躍。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては科学監修を務め、フィクションと実科学との架け橋として活躍中。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様」「MATSU」ぼっちの出演や、YouTubeで80万再生を超える科学動画を「主役は我々だ!」と共同製作も。仕事の依頼や関連情報は https://twitter.com/reraku

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