初出:2018/02/13 Vol.263 チョコレートの科学
改稿:2020/01/28

おや先生、やけに甘ったるい匂いがすると思ったら、チョコですか?

シーズン的にチョコの作り方を聞かれる事もあるんで、温度管理が雑でも大丈夫な方法でもと思ってね。

ああ、テンパリングって難しいと聞きますからねえ。

とりあえず、試作品でも食べるかね?

あ、いただきます・・・ぐはっ!

あれ、おかしいな、今回はマジで変な物は入れてないんだが・・・

せ、先生、私、アーモンドやクルミには、アレルギーが・・・(がくり)

あー・・・抗ヒスタミン薬はどこだったかな・・・
※アレルギー持ちなのは事実で、悪魔にはアーモンドやクルミが特効です。
意外と難しい手作りチョコ
2月を迎えると、バレンタインのシーズンが到来します。
「今年はチョコを手作りしよう!」という人もいるでしょう。
しかし、チョコレートというものは、非常に温度管理の難しい食べ物です。
レシピサイトを見ながら、チョコを溶かして型に入れて固めて・・・という工程で手作りチョコを作ると、残念ながらだいたいマズいものが出来上がってしまいます。
材料のチョコは美味しかったのに、固めるだけでマズくなる。どうしてでしょう?
今回はこの辺の解説と、そして手作りチョコを美味しくする科学的な裏技について触れていきます。
カカオバターの結晶構造とテンパリング
溶かして再度固めただけなのに、チョコがマズくなる。
この現象は、チョコレートに含まれるカカオバターの結晶構造によります。
カカオバターはパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸という脂肪酸で大半構成されていて、パルミチン酸やステアリン酸は本来ろうそくくらいの融点で非常に固い脂肪酸です。一方オレイン酸は常温では液体の脂肪酸で融点は16℃。
この異常な高低差のある脂肪酸のバランスから、テンパリングという工程が必要になり、それに失敗するとボソボソの結晶構造になりやすい・・・つまり、マズくなるわけです。
テンパリングとは一端50℃くらいに融かしたチョコレートを型に入れ、ここで急冷せず、25〜27℃に冷やし、再び31~32℃に加熱して少し柔らかくしてから、再度冷やし固めるという面倒な行程のことです。
このテンパリングの温度に関しては、メーカー別に決まっています。
単に「溶かして固め直すだけじゃん」とは行かないのは、このクッソ面倒なテンパリングが必要だからです。
この辺、丁寧に丁寧に温度管理をしていけば、手作りチョコも口当たりよく、美味しく作れます。
が、しかし、やはりそれは難しく大変な職人仕事の世界。
今回はもう少しお手軽な、科学的な裏技を紹介しましょう。
手作りチョコの科学的裏技
科学的裏技、といってもそう大層なことではありません。
手作りチョコを作る際は、バターやココナッツオイルといった、融点のほどほどの油脂を混ぜれば良いのです。
これらを適量、混ぜ込んでから固めれば、多少、温度管理が雑でも、ボソボソになりにくい、つまりは失敗しにくくなります。
なお、今回は食用としてココナッツオイルをオススメしている訳ですが、冬場の手荒れ防止なんかにも良い感じです。この辺は記事があるので関連記事をご参考にどうぞ。
ちなみに市販されている溶かして使うバレンタインチョコは、そんな温度管理をしなくても、そこそこの品質に調整されたチョコレート・・・のようなものです。
厳密には準チョコレートといって、チョコレートにアレコレ既に足したものです。なので、公正取引委員会の認定的に言うとバレンタイン準チョコレートと呼ぶのが正しいのです。
ちなみにお菓子用のチョコだと、不二製油のクーベルチュールが最高に美味しいです。
特にホットチョコにすると美味しい。個人的には、ビター寄りの方が好みなので、ミルクにビターチョコを少し混ぜたりします。
というわけで、バレンタインの手作りチョコに失敗しない裏技の話でした。ハッピーバレンタイン!
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