初出:2013/02/13 Vol.3 今日のクスリ 漢方
改稿:2024/11/18
鼻と喉がいだいです・・・先生・・・ゲホゴホ(チーン)。
うーむ・・・風邪のひき始めとかなら葛根湯を多めに飲んで寝とけば良くなったりもするんだが・・・まあいいや、ここに良いクスリがあるぞ。
・・・前それでオクレ化したんですが、大丈夫なんですかね?
前も死にはしなかったし、今回は平気だよ・・・たぶん。
ん・・・んん・・・おお! 鼻がスッキリ通りましたよ! 喉も痛くない!
おおー、効果覿面。やはり人体実験は大事だな!
かつてなく極めて爽快な気分ですよ! 今ならなんでも出来そうな気がする!
・・・ん、間違ったかな? ちょっと効きすぎなような・・・症状は治まっても回復してないから大人しく横に・・・
イエェェェエエエエ! 元気になったのでちょっと走ってきます!
(アカン)
※効果切れと同時に倒れたとか・・・冗談はさておき、病気の時は病院に行きましょう。
医学と漢方薬
漢方薬。
薬局の漢方コーナーは充実していますが、世間的にはそれほど注目されていないように思います。
とにもかくにも、薬といえば西洋薬。漢方というと、怪しげなまじないのような感じで見ている人さえいるものです。
しかし、何でもかんでも漢方が良いなんてことはもちろん言いませんが、時に医師から処方されることもある、立派な薬もあるのです。
今回はこの漢方薬にスポットを当ててみましょう。
医学の東西
西洋医学は、確かに、現代の医学を象徴する大変優秀なものです。
その根幹は抗生剤から始まり、ステロイドとワクチンという3本柱でなりたってきた素晴らしいものですが、経験値という点では東洋医薬にも目を向ける部分は多くあります。
世界初の抗生物質、ペニシリンを、アレクサンダー・フレミングがアオカビから見つけたのって1928年ですしね。
ドイツのIGファルベン社で作られた抗生剤(抗菌剤)のプロントジル(サルファ剤)も1932年。
反面、漢方薬などの東洋医学は、現代の医療水準から見るとトンチキなものも混ざってはいますが、千年以上もの経験値から生み出された、積み重ねによる配合があります。
何がどう作用して効果が出ているのかはっきり分かっていないものも多いのですが、慢性疾患や風邪などの、原因がはっきりしないものや、身体の免疫力低下などの病気の一歩手前にはかなり有効な薬が多いのも事実です。
ヘルドクターくられのオススメ漢方
ここからは、自分のオススメ漢方の話をしていきます。
とはいえ、オススメではあっても別に万能薬でもなんでもないので、本格的に風邪を引いたり、こじらせてしまった時はちゃんと医者にいきましょう。
その上で、普通の薬の他にも、医者と相談した上で適応となる漢方薬を処方してもらう、ということも可能なので。
毎度毎度言ってることですが、なんかあったら医者行けというのは大事なのです。
葛根湯
まず有名なのが「葛根湯」。定番も定番ですね。
風邪を引きそうな時、初期症状が出ている時に、2、3倍量飲んで寝ればそれだけで次の日スッキリになることも多々あります。
ただしあくまで「風邪引きそうな時の事前対処」が前提にあることはご承知おきください。「葛根湯のんどけば平気だろう」みたいなノリは良くないので。
桂枝湯
続いて「桂枝湯」。これも葛根湯同様、風邪の初期に向いた漢方です。
そういった効果もアリはアリなのですが、オススメの理由はまた別にあります。
この桂枝湯、慢性頭痛に何故か効くことがあるのです。もちろん効果のほどは人それぞれですが・・・
頭痛薬の選択肢として考慮してみても悪くありません。
桔梗湯
喉に効くのが「桔梗湯」です。
前に別の記事でも紹介したことがありますが、喉の痛みや腫れに効果があります。
ぬるま湯に溶かして、うがいをするように喉を洗ってそのまま飲んだりすると、喉のイガイガ感が相当マシになることも。
麻黄湯
多くのウイルス性疾患に強いのが「麻黄湯」。
実はインフルエンザにも保険適用があったりするので、その効果は無視できません。
もちろんインフルエンザ対策にはワクチンが欠かせないわけですが、その上で免疫力をブーストするのに使う感じです。
ただし、麻黄にはエフェドリンも含まれており、賦活作用もあって元気にもなるのですが、無闇に使いすぎるとかえって免疫力を落とす結果になることもあります。
用法用量を守って正しくお使いください。
小青竜湯
小青竜湯は鼻の諸症状や気管支炎に効果があります。
かつて我々さんコラボの科学動画でも紹介した奴ですね。鼻水が辛い時なんかに向いてる。
防風通聖散
あとは、ダイエット効果があったりする「防風通聖散」。
BMIで「肥満」のエリアにある人は、この薬だけで数キロ痩せることもあります。「ナイシトール」という名前で売られている薬も、成分はこの防風通聖散です。
ぶっちゃけ、ナイシトールを買うより漢方コーナーで防風通聖散を探した方がお安くあがります。最近は医師が処方することもあるそうなので、気になる人は内科ないしは消化器科で相談を。保険が利くとさらにお得です。
この辺、薬局売りの痩せ薬、として別立てて記事がいくつかあるので、詳細が気になる方は関連記事からどうぞ。
総括
というわけで、漢方薬を見直してみよう、という感じでご紹介してきました。
世の中「西洋医学は薬漬け! 漢方は体に優しいから漢方じゃなきゃダメ!」とか「漢方なんて仕組みのよくわからん怪しげなクスリを使えるか!」とか、中にはそういう極端な方もいますが、どっちが良いとか良くないという問題ではありません。
漢方の中には、毒と薬は裏表という感じで、一般的に毒草とされるもの、それこそ有名なトリカブト(漢方では附子と呼ばれる)なんかが含まれていることもあります。これが慢性的な疼痛緩和に役立ったりする。
毒性の話をする度に「毒とは量である」と触れている通りですね。そして、薬というのは医学の東西を問わず、主作用と副作用があるので、天然だから安全安心なんて理屈は存在しないわけです。
この辺を履き違えてはいけません。そして、中にはニセ医学も紛れ込んでいたりもするので、警戒は必要です。
が、しかし、持病があるなら医師とよく相談をし、そしてその中の選択肢として、漢方薬もあるよ、という話だとご理解いただければ幸いです。
柿のヘタでしゃっくりが直る?
漢方と言えば、りりか先生との対談動画で「柿のヘタ」を取り上げました。しゃっくりに効く漢方です。気になる方はぜひご覧ください。
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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